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元利均等返済とは?元金均等返済との違いや、メリットと注意点を解説!
住宅ローンを利用しようと考えています。返済方法について、金融機関に「元利均等返済」を提案されたのですが、よく分かりませんでした。元利均等返済とは何でしょうか?また、「元金均等返済」と何が違うのでしょうか?
元利均等返済とは、返済期間中の住宅ローン支払額が一定になる返済方法です。対して、元金均等返済では、返済当初の住宅ローン支払額は大きい一方、支払いが進むにつれて返済額は減っていきます。どちらの返済方法にもメリットと注意点があるので、返済額をシミュレーションし、自分に合った返済方法を選ぶことが大切です。
情報提供:不動産鑑定士 竹内 英二
目次
元利均等返済とは?
住宅ローンを利用する際、気になるのが返済のことですね。返済方法の一種に「元利均等返済」というものがあります。
元利均等返済とは、借り入れした額の元金と利子を合わせて返済期間で均等に分割し、返済するという、返済方法の1つで、読み方は、「がんりきんとうへんさい」です。この場合、返済期間中、毎月の住宅ローン支払額が一定になります。
また、住宅ローンには元利均等返済のほかに「元金均等返済(がんきんきんとうへんさい)」という返済方法もあります。元利均等返済が、元金と利子を返済期間で均等に分割する方法であるのに対して、元金均等返済は元金だけを返済期間で均等に分割し、金利は残元金に応じてかかるという返済方法です。元金均等返済による返済が進むと利子が減り、住宅ローン支払額も減っていきます。
今回は、元利均等返済と元金均等返済の2種類の返済方法について、違いやそれぞれのメリットなどを詳しく解説していきます。住宅ローンを利用する際に、どちらの返済方法を選んだらよいか迷っている人は、判断する際の参考にしてください。
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「元利均等返済」と「元金均等返済」それぞれのメリットと注意点
住宅ローンの返済方法である元利均等返済と元金均等返済には、それぞれメリットと注意点があります。
元利均等返済の場合
元利均等返済は、毎月の返済額が一定になることが特徴ですが、これによってどのようなメリットや注意点があるのでしょうか。
●メリット
元利均等返済は、返済期間中の支払額が一定のため、計算がしやすく返済計画を立てやすいことが大きなメリットです。
また、元金均等返済に比べると、返済開始当初の支払額が少なく済むことも特長です。新生活を始める際には何かと費用がかかるので、返済額が抑えられると引越し代や家具の購入資金に充てられますね。
●注意点
元利均等返済を用いる場合、返済金額は一定している一方で、総支払額は元金均等返済より多くなってしまう点に注意が必要です。
元金均等返済は、毎月支払う元金が一定しているので、元金が早く減っていきます。つまり、徐々にかかる利子が少なくなるので結果的に、総支払額は元金均等返済のほうが安くなります。
また、返済にあたっての利子は、住宅ローンの残高によって計算されますが、元利均等返済は支払いの仕組み上元金の減り方が元金均等返済と比較して遅いため、総返済額も大きくなってしまいます。
元金均等返済の場合
毎月の返済額が一定している元利均等返済に対して、元金の返済額が一定となるのが元金均等返済ですが、こちらにも以下のようなメリットと注意点があります。
●メリット
元金均等返済の大きな特長は、将来の返済負担が軽くなることです。返済を重ねるにつれて元金と元金に応じた利子が徐々に減っていくため、返済後期の支払額は当初に比べて少なくなります。
また、元金均等返済は、上でも述べた通り元金の残債の減り方が早く、かかる利子もしだいに減っていきます。そのため、同じ借入期間の場合、総支払額が元利均等返済に比べて少なくなることもメリットです。
●注意点
元金均等返済は、返済当初の支払額が大きいため、審査基準の年収額が高くなっています。そのため、審査の際に年収が基準に達していない場合は、元金均等返済を選べない場合もあるでしょう。また、返済負担率(年収に占めるローンの返済額のこと)が高くなることから、借入額を減らされることも考えられます。そもそも、元金均等返済を取り扱っていない金融機関もありますので注意しましょう。
●住宅ローンの固定金利・変動金利に関しての記事はこちら
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返済シミュレーションと総支払額を抑える方法
ここでは、前述したメリットと注意点の理解がより深まるように、実際に住宅ローン返済のシミュレーションをご紹介します。
元利均等返済のシミュレーション例
今回のシミュレーションでは、固定金利2%として借入金額3000万円を35年かけて返済すると仮定します。
元利均等返済※1
元利均等返済 | 1年目(12回目) | 10年目(120回目) | 20年目(240回目) |
---|---|---|---|
毎月返済額 | 9万9378円 | 9万9378円 | 9万9378円 |
元金部分 | 5万291円 | 6万201円 | 7万3517円 |
利子部分 | 4万9087円 | 3万9177円 | 2万5861円 |
借入金残高 | 2940万1997円 | 2344万6504円 | 1544万3378円 |
元金均等返済※1
元金均等返済 | 1年目(12回目) | 10年目(120回目) | 20年目(240回目) |
---|---|---|---|
毎月返済額 | 12万118円 | 10万7261円 | 9万2975円 |
元金部分 | 7万1428円 | 7万1428円 | 7万1428円 |
利子部分 | 4万8690円 | 3万5833円 | 2万1547円 |
借入金残高 | 2914万2864円 | 2148万8640円 | 1285万7280円 |
上記の表のように計算するのは難しく、手間も時間もかかります。ですが、エクセルに関数を打ち込めば自分で返済額をシミュレーションできるので、気になる人は調べてみてください。
元利均等返済で総支払額を抑える方法
比較的総支払額が多い元利均等返済でも、元金を減らす方法があります。繰り上げ返済やボーナス返済を活用して元金を減らせば、その分利子が減り、返済総額も抑えられるのです。
また、低金利もしくは、借入金額が少額であれば、元利均等返済と元金均等返済の総支払額の差は少ないでしょう。
●繰り上げ返済に関しての記事はこちら
住宅ローンの繰り上げ返済の仕組みやメリット、タイミングについて詳しく解説しています。
元利均等返済と元金均等返済、どっちがよいの?
元利均等返済と元金均等返済のどちらが向いているかは、今後のライフプランやマネープランによって決まります。上で解説したメリットと注意点を参考にして、自分に合った返済計画を立てましょう。
元利均等返済が向いている場合
元利均等返済には、毎月の返済額が一定で、資金計画を立てやすい特長があります。この先、教育費や個人事業などにお金がかかるため毎月の返済額をなるべく抑えたい人に向いているでしょう。
そして現在、住宅ローンは超低金利であるため、元利均等返済と元金均等返済の総支払額に大きな差がない場合もあります。そのため、借入額が少額の人も、総支払額に大きな差が出にくい元利均等返済が向いているでしょう。
元金均等返済が向いている場合
元金均等返済には、返済初期の返済額が大きく、審査基準となる年収も高いなど、家計の余裕が必要とされます。そのため、基本的には資金に余裕がある人に向いているでしょう。
また、現在は働いていても、定年を迎えた後の住宅ローン返済を見据えて将来の支払額を抑えたい人にも、返済額が減っていく元金均等返済は向いているでしょう。
自分に合った返済方法を選択しよう
これまで、元利均等返済と元金均等返済を比較してそれぞれの特徴を説明してきました。
ローン返済は、一般的に10年単位といった長いスパンで返済することが多く、返済方式の変更はできない場合もあります。ですから現在の生活だけでなく、将来のライフプランも考えて慎重に返済計画を立てることが大切です。
返済が定年退職後まで続く計画の場合、年金暮らしになると同時に、家計に占める返済負担の割合が大きくなります。これは高齢時の再雇用などで、収入が減少した際にもいえることです。ですが、期間短縮型の繰り上げ返済を行っておくことも可能で、収入が減少するまでに完済しておくと老後が安心です。
元利均等返済と元金均等返済で迷った場合は、シミュレーションシステムを使って比較し、実際に返済していけるかイメージしてみましょう。無理がないか検討し、返済予定表を作ってみるのもおすすめです。
●返済額の計算方法に関する記事はこちら
住宅ローンの返済額の計算方法を詳しく解説しています。
※1出典:フラット35「返済プラン比較シミュレーション」
https://www.simulation.jhf.go.jp/type/simulation/hikaku/openPage.do
(最終確認日:2023年1月17日)
情報提供:不動産鑑定士 竹内 英二
株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、不動産キャリアパーソン、中小企業診断士。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングを行う。
HP:https://grow-profit.net/