マンション購入ガイド
鉄骨造とは?木造や鉄筋コンクリート造との違いも解説
現在、マイホームの購入を検討しています。最近、物件を探していたら「鉄骨造」という言葉が目に留まりました。鉄骨造とは、どのような構造の建物なのでしょうか?また、ほかにどんな構造の建物がありますか?
鉄骨造とは、建物の骨組みになる梁や柱などに鉄骨を用いた建物を意味します。鉄骨造には、品質が安定し、耐震性・耐久性に優れているという特徴があります。鉄骨造のほかには、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、木造があり、用いる材料と建築方法がそれぞれ異なります。
情報提供:不動産鑑定士 竹内 英二
目次
鉄骨造とは?
マイホームを購入する際、建物の構造がどのようなものか気になると思います。住宅の構造は、住み心地に関連する大きな要素の1つですから、最初にどのような構造かを知ったうえでマイホームの購入を検討したほうがよいでしょう。
鉄骨造とは、梁や柱など、建物の骨組みに鉄骨を用いた建物のことをいいます。使用される実際の材料は、鉄の合金である「鋼」です。鋼はスチールとも呼ばれるため、鉄骨造は「S造」とも呼ばれています。鉄骨造が採用される建物の種類は幅広く、個人の住宅やアパートをはじめ、ビル、倉庫、工場、体育館といった大規模建築建物でも用いられています。
今回は、鉄骨造の特徴やメリット、注意点と併せて、そのほかの構造についても解説していきます。
2種類ある鉄骨造
鉄骨造は、使用する鋼材の厚みを基準にして、「軽量鉄骨」と「重量鉄骨」の2種類に分類されます。それぞれ特徴が異なるので、具体的に見ていきましょう。
軽量鉄骨
一般的に、厚みが6mm未満の鉄骨は、軽量鉄骨と呼ばれます。軽量鉄骨を使用して建物を建てる場合は、梁や柱をボルトで固定する「鉄骨軸組工法」が用いられます。この工法では、耐震性を高めるために、鉄骨を対角線に組み、そのX型の筋交いのことを「ブレース」と呼ぶことから、「ブレース工法」と呼ぶこともあります。
軽量鉄骨構造は、一般住宅や2階~3階建ての共同住宅に多く採用されています。軽量鉄骨構造の場合、次に説明する重量鉄骨構造よりも建設コストを抑えられるという特徴があります。また、建物全体が重量鉄骨に比べると軽くなるため、地盤によっては、大規模な地盤改良や基礎工事が不要になることもあります。
さらに、軽量鉄骨は工期が短いため、人件費を抑えられる点も特徴です。
ただし、重量鉄骨構造と比べると、遮音性には劣ります。さらに、使用する鉄骨の本数が多くなるため、店舗には向かないという特徴があります。
重量鉄骨
一般的に鉄骨の厚みが6mm以上の場合は、重量鉄骨と呼ばれます。
重量鉄骨で建物を建てる場合、「鉄骨軸組工法」のほか、梁や柱を溶接で接合して枠を一体化する工法「鉄骨ラーメン構造」も用いられることがあります。ラーメン構造では、鉄骨をジャングルジムの枠のように組んでいきます。ちなみに、「ラーメン」とはドイツ語で、「枠」を意味します。
重量鉄骨構造は、個人の住宅をはじめ、4階~5階程度のマンション、店舗ビルなど、大型建築にも多く採用されています。使用する鋼材が軽量鉄骨よりも厚いため、1本当たりの柱の強度が高く、空間内の柱を少なくできるという特徴があります。柱の間隔を広く取れるため、重量鉄骨構造を採用すると、広い空間を造ることが可能になります。
ただし、重量鉄骨は、軽量鉄骨に比べると建設コストがかかります。また、建物自体が軽量鉄骨より重いため、軟弱な地盤の場合は、基礎工事の際に大規模な地盤改良が必要になることもあります。
鉄骨造以外の構造
建物の構造には、鉄骨造以外にもいくつかあります。どのような構造があるか見ていきましょう。
鉄筋コンクリート造(RC造)
梁や柱などの主要構造部を、鉄筋コンクリートで構築する工法で、RC造とも呼ばれます。耐火性・耐震性、遮音性や気密性が高いため、中・高層マンションやビルで多く採用されています。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
梁や柱などの主要構造部を、鉄筋コンクリートと鉄骨で構築する工法で、SRC造とも呼ばれます。鉄筋コンクリートに「鉄骨」が加わることで、建物がより丈夫になるため、大型ビルや超高層ビル・マンションで採用されています。
●RC造に関する記事はこちら
RC造について、ほかの構造との違いやそれぞれのメリットや注意点をご紹介しています。
木造(W造)
梁や柱などの主要構造部を木材で構築する工法で、W造とも呼ばれます。木材を使用するため、木の温もりを感じることができ、主に一戸建て住宅で採用されています。
●木造住宅に関する記事はこちら
木造の特徴やメリット、注意点などを詳しく紹介しています。
鉄骨造のメリットと注意点
ここからは、鉄骨造のメリットと注意点について詳しく見ていきます。
メリット
鉄骨造には、採用するメリットが複数あります。具体的に見ていきましょう。
●品質が安定している
鉄骨造(主に軽量鉄骨造)は、一般的に梁や柱、床、壁、屋根などの構造体を工場で造り、現場で組み合わせて建物を建てていくというプレハブ工法が採用されます。そのため、建物の品質が一定に保たれ、職人の技量によって完成度が異なる、ということがありません。そういった理由から、施工ミスが起こりにくいという特徴があります。
●工法によっては間取りに自由度がある
重量鉄骨造でラーメン構造を採用する場合には、間取りの自由度が高くなります。広いリビング、吹き抜け、大きな窓など、開放感のある間取りや柱の少ない店舗区画が可能です。
一方、重量鉄骨や軽量鉄骨で鉄骨軸組工法を用いる場合には、ブレースが入った壁の位置を動かせないこともあり、間取りの自由度は低くなりやすいのが実情です。
●RC造やSRC造に比べて費用を抑えられる
鉄骨造は、RC造やSRC造よりも、材料費が安くなるため、建設費用を抑えることができます。また、RC造やSRC造に比べると、プレハブ工法も用いられる鉄骨造は工期が短い傾向があり、人件費にかかるコストも低くなります。
●耐震性が高い
鉄骨造の場合、地震が起きると、建物に使用している鉄がしなり、エネルギーを吸収するため、優れた耐震性を発揮します。
また、重量鉄骨のように頑丈な鋼材を使用していれば、構造体が倒壊する可能性は非常に低いといわれています。
●木造と比べて耐用年数が長い
鉄骨造の建物は、適切なメンテナンスを施せば、実際の耐用年数が
50年〜60年以上、ときには100年近い場合もあります。ここでいう耐用年数は、建物の寿命を意味し、その建物を実際に使用できる期間を指します。
なお、耐用年数には、この「物理的耐用年数」のほか、固定資産税の減価償却費を計算するために必要になる「法定耐用年数」や、不動産の経済価値が発生する期間を表す「経済耐用年数」があり、法定耐用年数は建物の構造や用途によって一律に定められています。
●耐用年数に関する記事はこちら
耐用年数に関して詳しく解説しています。
注意点
鉄の性質にはいくつかの注意点があるため、工事の際、必要になる施工がいくつかあります。
●地盤補強
重量がある鉄骨造の場合、土地の状態によってはしっかりした地盤補強が必要になります。その際は住宅の建築費に併せて、地盤補強のためのコストが余分にかかります。
ただし、木造の場合でも地盤が軟弱であれば、地盤補強のための基礎工事が必要になるため、地盤補強の必要性は鉄骨造だけに限ったことではありません。
●断熱施工
鉄は熱が伝わりやすいという性質があるため、外気温の影響を受けやすく、夏は暑く、冬は寒くなりやすくなります。こうした鉄の性質に対処するには、断熱施工を施す必要があります。
なお、断熱施工は、木造や鉄筋コンクリート造の場合でも必要になってきます。
●防音対策
鉄筋コンクリート造や、鉄骨鉄筋コンクリート造は、天井や床、壁などの質量が大きく、建物全体の質量も大きくなるため防音性や遮音性が高くなりますが、鉄骨造はそれに比べると防音性や遮音性は低くなります。
ただし、壁や床を厚くすることで、防音性や遮音性を高めることができます。
●耐火被覆
鉄には熱に弱いという性質があるため、鉄骨造の耐火性は決して高いとはいえません。万が一、火事が起こると、上昇した温度で鉄骨の強度が低下し、最悪の場合、倒壊することもあります。
そこで、熱から守り、倒壊させないために、耐火性の高い材料で鉄骨を覆う「耐火被覆」という工法がよく用いられます。建築基準法では、耐火被覆を施した鉄骨造は「耐火建築物」とみなされ、火災が発生しても被害を最小限に抑えられる建物として認められます。
特に都市計画法で「市街地における火災の危険を守るために定める地域」として指定された「防火地域」では、原則、階数が3階以上、また延べ面積が100m2を超える建物には耐火被覆を施し、「耐火構造」にする必要があります。それ以外の建物は、耐火構造より少し緩やかな規制である「準耐火構造」でもよいとされています。
家の構造を知って、希望の住まいを選択しよう!
家の住み心地は、建物の構造によって変わってきます。これまでお伝えした鉄骨造のほかに、一戸建てには、木造やRC造で建築されるものも多くあります。これらの構造にはそれぞれメリットも注意点もあるため、どの構造の住宅がよいかは一概にはいえません。
「低コスト」「安全性」「耐久性」「耐震性」「デザイン性」のほか、何を重視して家を選ぶかをあらかじめ決めておき、目的に合う構造の住宅を選ぶことをおすすめします。そのためにも、いくつかの建物の構造の特徴を知り、住宅購入を検討する際に役立ててくださいね。
情報提供:不動産鑑定士 竹内 英二
株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、不動産キャリアパーソン、中小企業診断士。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングを行う。
HP:https://grow-profit.net/