高気密高断熱住宅とは
住宅の購入や建築のために情報を集めていると、「高気密高断熱住宅」というワードに出会う機会があります。家の気密性や断熱性が高ければ、外気温の影響を受けにくいため空調が効きやすく、光熱費の節約になるというメリットに気付いている方は多いでしょう。しかし、そのほかのメリットや、高気密高断熱住宅が注目されている理由まで詳しく知らないという方もいるのではないでしょうか?
実は、住宅の気密性と断熱性を高めようという考え方が普及しつつある背景には、国の施策が関係しているのです。日本は、地球温暖化対策にかかわる「パリ協定」に調印しており、国内では2050年までにカーボンニュートラル、すなわち温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目指すという目標を掲げています。カーボンニュートラルに向けた取り組みの一環として、住宅の省エネ化のための制度づくりが進んでいて、住宅の気密性と断熱性を高めることが注目されているのです。
具体的には、小規模(延べ面積300m2未満を想定)の住宅・建築物の建築を行う際に、設計者(建築士)から建築主への省エネ性能に関する説明が義務付けられるようになりました。また、ハウスメーカーが供給する一戸建て住宅等についても、省エネ基準を上回る基準をクリアした住宅を供給することが求められています。
さらに、2025年から「改正建築物省エネ法」が施行されることが決定しています。そのため、家庭で消費するエネルギーを減らすために、政府がZEH(ゼッチ)と呼ばれる省エネや創エネ、高気密・高断熱性能などの要素が入った家を増やす取り組みを促進する流れもあります。最終的に、2030年までに全ての新築建物を省エネの基準対象とすることが政府の方針として掲げられているのです。
このような、国や地方自治体の定めた省エネ基準を満たした住宅を「省エネ住宅」と呼び、近年では省エネ住宅と認められれば、国や地方自治体から補助金を受けられるようになりました。
国が主体となって住宅の省エネ化を進めていくという流れが起きている事情から、今後住宅を購入するうえで、省エネは外すことのできない要素といえます。住宅の省エネ化という視点で見れば、外壁の気密性や断熱性が高いと、冷暖房にかかるエネルギー消費を小さく抑えられるため有利なのです。
高気密高断熱住宅が、省エネという観点で優れていることをお伝えしてきましたが、実際に家を購入して暮らすことになる方にとっては、生活のなかで感じられるメリットも気になりますよね。ここからは、省エネ以外のメリットや、住宅の気密性と断熱性を高めるうえでの基準について、詳しく見ていきましょう。
高気密高断熱住宅の「高気密」と「高断熱」とは?
高気密高断熱住宅のメリットを挙げる前に、「高気密」と「高断熱」の基準は何なのか、どのような工夫をして建てられるのかについて理解しておきましょう。
高気密
家の密閉性が高い状態とは、外壁や窓などから外気が侵入する隙間がなく、家の中の空気を逃がさない状態を指します。住宅のなかで隙間ができやすい箇所には、壁・天井・窓などの接続部分や、パイプや管を通した穴の部分が挙げられます。こうした箇所の隙間が小さいほど、家の気密性は高くなりやすいといえるのです。
密閉性の指標
建物の気密性は、「C値」という数値で表現されます。C値は「相当隙間面積」とも呼ばれ、延床面積1m2あたりに隙間が何cm2あるかを表しています。つまり、C値が小さければ小さいほど、建物の隙間が小さいことになるのです。
密閉性を高める工夫
高気密高断熱住宅を建てる際は、精度の高い建築部材を使いながら、防湿シート、断熱材、気密シートなどを用いて、隙間を作らないように注意が払われます。
家の気密性が低いと、屋内と屋外の空気が簡単に出入りしてしまうため、冬は暖かい空気が外に漏れ、夏は冷たい空気が外に漏れてしまう恐れがあります。すると、空調を稼働させても効率が落ちてしまうのです。
特に、日本に多い木造住宅は、鉄筋コンクリート造の家よりも隙間が多い傾向にあり、気密性が低くなりがちです。そのため、先ほど例に挙げた防湿シートや気密シートなどを活用して、建築時に気密性が高められているかが重要といえます。
高断熱
家の断熱性が高い状態とは、室外の温度の影響を受けにくくした状態を指します。住宅の断熱性を高めるのは、高気密の場合と同じく、屋内外で熱が出入りすることを防ぐ狙いがありますが、気密性は「空気の出入り」に関する性能なのに対し、断熱性は「熱の伝達」そのものに関する性能という違いがあるのです。
断熱性の指標
家の断熱性能は、「Ua値」で表されます。Ua値は「外皮平均熱貫流率」ともいい、家の中と外に1度の温度差がある場合に、外壁1m2あたりでどれくらい熱が逃げるかを示した数値となります。Ua値が低ければ低いほど断熱性能がよく、熱の出入りが少ないことを意味します。
断熱性を高める工夫
断熱性能を高めるためには、外壁の中や、床や天井の裏に断熱材を入れるほか、断熱性の高い窓を採用することが有効となります。断熱性能が低いと、室内の温度が外気温の影響を受けやすくなります。つまり、夏は暑く、冬は寒い家となってしまいやすいのです。
高気密高断熱住宅のメリットとは?
家の気密性と断熱性を高めると、室内の温度が外部の環境の影響を受けにくくなることを説明してきました。では、生活のなかで受けられるメリットとしては、具体的にどのようなことが考えられるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
室内温度が快適に保たれる
家の中の気温が外気温の影響を受けにくくなるため、室内気温の変化を小さく抑えることができます。室内気温が一定であれば、暑さや寒さを気にせずいつも同じ部屋着を着られるといったこともあり、高気密高断熱住宅は快適に過ごせる住宅といえるでしょう。
また、気密性と断熱性に優れた住宅は、部屋同士の温度差も小さく抑えやすくなります。たとえば、脱衣所や浴室は基本的に暖房がなく、冬場になると寒くて服を脱ぐのがつらいと感じる方も多いでしょう。しかし、気密性と断熱性に優れた住宅の場合は、外の冷気が室内に伝わりにくいため、脱衣所や浴室だけが極端に冷えるという現象が起こりにくくなります。
さらに、室温が安定していることにより、ヒートショックと呼ばれる、部屋間の急激な温度差によって引き起こされる心臓発作や脳卒中といった健康被害が起きるリスクを軽減できます。ヒートショックが起こりやすい高齢者や、高血圧や不整脈などの持病を抱える方がいるご家庭でも安心して生活できるのが特長です。
光熱費を抑えられる
気密性と断熱性の高さにより、冷暖房の効きがよいことも魅力の1つです。冷暖房効率が高く、電気代の削減ができるのは大きなメリットとなります。
また、光熱費を抑えられることは、火力発電で生じる二酸化炭素やメタンガスといった温室効果ガスの削減にもつながります。つまり、高気密高断熱住宅は環境にやさしい住まいといえるのです。
換気の効率がよい
2003年の建築基準法改正以降、日本の住宅には「24時間換気システム」の設置が義務付けられており、窓を開けなくても、空気循環が可能となっています。そしてこの換気システムは、気密性が高いほど無駄な漏気を防ぎ、換気の効率がよくなるため、高気密高断熱住宅は換気効率のよい住宅だといえるでしょう。
換気効率がよいと、常に新鮮な空気を取り込むことができるため、シックハウス症候群の防止にもつながります。また、断熱性の高さと換気効率のよさが融合することにより、冬場でも結露が起きにくくなるというメリットもあります。しかし、電気代を節約するために換気システムを切ってしまうと、湿気のこもりやすさにより、逆に結露が発生しやすい環境になってしまうため注意しましょう。
高気密高断熱住宅の注意点
高気密高断熱住宅は環境にやさしいだけでなく、快適に暮らせたり、光熱費を削減できたりするメリットがあることを解説してきました。しかし、さまざまなメリットがある一方で、購入や建築のうえで気を付けるべきポイントも存在します。高気密高断熱住宅の主な注意点は以下の3つです。
建築コストがかかる
気密性や断熱性を高めるために、気密シートや断熱材を使ったり、窓の遮熱性を高くするために品質の高いガラスを使用したりすることになるため、一般的な住宅よりも建築コストが高くなってしまいます。
ただし、高気密と高断熱を実現することで、光熱費を節約しながら快適な暮らしが実現でき、長期的な出費を抑えることができます。また、国や地方自治体によって「省エネ住宅」と認定されれば、補助金を利用できる可能性があるため、長期的に見てコストの削減となることも十分に考えられるのです。
住宅を建てたり購入したりする際に利用できる補助金の最新情報については、以下の記事で詳しく解説しているため、ぜひチェックしてみてくださいね。
乾燥しやすい
高気密高断熱の住宅は、室温が高く保たれることから、部屋が乾燥しやすいという特徴があります。また、気密性の高さにより、一酸化炭素の発生する石油ストーブやファンヒーターを使用できず、エアコンや全館空調を使用するという点も、乾燥のしやすさにつながっています。
部屋干しをする際にはうれしい点ではありますが、空気中の水分が少ない冬場は室内が乾燥し過ぎる「過乾燥」の状態になることもあるため、注意が必要です。冬の乾燥対策としては、洗濯物を部屋干ししたり、加湿器を置いたりすることが有効です。
内部結露が起こるケースもある
結露には、窓ガラスや壁などの表面に発生する「表面結露」と、壁の内側や床下などの目に見えない箇所に発生する「内部結露」の2種類があります。そして、高気密高断熱住宅の場合、施工不良によって断熱材に隙間ができてしまうと、そこに内部結露が発生しやすくなってしまいます。内部結露は住宅の柱や土台を腐らせ、害虫被害を起こしやすい温床となってしまう恐れがあるため、住宅を長持ちさせるためには、十分に気を付けなければなりません。
内部結露は、壁の内側に水蒸気が侵入し、冷やされてそのまま水滴になってしまうことで生じます。施工不良を起因とする場合が多いため、実績豊富で信頼できる施工会社に工事を依頼することが対策となります。
よくある質問
ここでは、高気密高断熱住宅に関するよくある質問を抜粋してお答えします。
住んでみて、酸欠にならない?
高気密高断熱住宅は、優れた点の多い住宅様式です。しかし、インターネット上では「酸欠で息苦しさを感じそう」「空気がこもって気持ち悪くなるのでは?」といった声も散見されます。実際、空気の流れが長時間滞ってしまうと、細菌や化学物質が増えて、目まいや頭痛を引き起こす「シックハウス症候群」が起きる可能性があるのです。
しかし、前述の通り2003年以降に建てられたり、リフォームされたりした物件であれば、「24時間換気システム」の設置が義務化されており、新鮮な空気を常に取り込めるようになっています。高気密の住宅で24時間換気システムを活用すれば、気密性の低い場合と比べて空気の流れのロスが少ないため、効率よく換気ができます。
ただし、2003年より前に建てられた、24時間換気システムが設置されていない住宅の場合には注意が必要です。換気システムがない家にお住まいの方は自分で定期的な換気を行うことを心がけましょう。
高気密高断熱の基準は?
「高気密高断熱」という言葉の基準は、業者によって異なります。住宅を購入するうえで、高気密高断熱の基準をどのように設けているか、ハウスメーカーや工務店、不動産会社の担当者に確認することをおすすめします。
リフォームで断熱性を高められる?
リフォームを通して家の断熱性を向上させたい場合は、断熱材を追加したり、窓を遮熱性能の高いものに交換したりするなどの工夫を施すことが可能です。ただし、気密性をリフォームで向上させることは難しいため、高気密高断熱のマイホームを目指すなら、購入時から意識しておく必要があります。
高気密高断熱住宅を検討しよう!
高気密高断熱住宅を選ぶことで、住環境の向上や光熱費の節約などにつながることを解説してきました。ただし、このようなメリットを最大限に生かせるかどうかは、施工精度のよしあしに大きく左右されます。高気密高断熱住宅は、一般的な住宅と比べて高額になる傾向にあるため、信頼のおける業者によって建てられた、十分に性能の高い住宅を選びたいものです。
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