マンション購入ガイド
固定資産税評価額とは?調べ方や計算方法などを解説
家を購入する際にかかる税金について調べていると「固定資産税評価額」という耳慣れない用語が出てきました。固定資産税評価額とはどのようなものなのでしょうか?また固定資産税評価額からわかることを教えてください。
固定資産税評価額は土地や建物などの不動産の価値を評価した額です。毎年1月1日時点に所有している不動産に課せられる固定資産税だけでなく、さまざまな税金の金額を決めるうえでの指標となります。
情報提供:税理士 宮原 裕徳
目次
固定資産税評価額とは?
不動産を所有すると税金が発生することは知っているものの、どのように税額が決められているのか分からないという方もいるのではないでしょうか?所有している不動産にかかる固定資産税や都市計画税、不動産を売買・贈与で取得したとき、または建物を新築・増築したときに都道府県が課税する不動産取得税のほかに、登録免許税、相続税は「固定資産税評価額」をもとに計算されます。
固定資産税評価額は、「固定資産税評価基準」をもとに決定される不動産の基準価格のことで、評価対象の不動産がある各市区町村によって決められています。評価額を決める基準は、土地と建物で異なり、土地の場合は「売買実例価格」、建物の場合は「再建築価格」となります。売買実例価格とは実際の市場で取引される価格、再建築価格は現在建っている建物を全く同じ構造、材料で建て直した場合にかかる費用を意味します。
なお、固定資産税評価額は3年ごとに「評価替え」が行われ評価額が更新されるため、評価替えの前後で納税額が変化する可能性がある点に注意が必要です。
マンションや一戸建てといった不動産の購入を検討している方のなかには、「固定資産税評価額は何で調べるの?」「どのようにして決められているの?」と疑問に思っている方もいるでしょう。この記事では、固定資産税評価額の調べ方や決まり方、固定資産税を軽減する方法などについて解説します。
固定資産税評価額の調べ方
固定資産税評価額の調べ方は既に所有している不動産の場合と、これから取得する不動産の場合で異なります。それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。
既に所有している不動産の場合
既に所有している不動産の固定資産税評価額を調べる方法は主に3つあります。
●課税明細書
所有している不動産の評価額は市町村(東京23区の場合は東京都)から送られてくる「課税明細書」で確認できます。課税明細書とは、毎年6月頃に届く固定資産税の納税通知書に同封される書類のことです。課税明細書の「価格」欄に記載されている数字が、固定資産税評価額にあたります。
なお、課税明細書および納税通知書は再発行ができないため、紛失してしまうことがないよう、大切に保管しておくことが重要です。納税通知書の詳しい見方や確認方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
●固定資産税の確認書類の取得方法や見方に関する記事はこちら
固定資産税の納税額を確認する方法や書類の見方を、サンプルを交えながら解説しています。
●固定資産課税台帳
課税明細書を紛失してしまった場合には、役所で「固定資産課税台帳」を閲覧することで評価額を確認できます。固定資産課税台帳には、固定資産税の課税対象となる土地や家屋の所有者、所在地、価格などが掲載されています。
●固定資産評価証明書
「固定資産評価証明書」でも固定資産税評価額を確認することが可能です。固定資産評価証明書とは、固定資産の所有者や所在地、課税標準額などが記載されている書類のことで、申請書と本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード)、手数料などの必要書類を提出すれば全国の市役所で入手できます。
また、固定資産評価証明書は郵送で取り寄せることも可能です。市町村のホームページから申請書をダウンロードし、必要事項を記入したうえで役所に送付しましょう。
これから取得する不動産の場合
これから取得する新築住宅の固定資産税評価額は、正確な金額を知ることはできないという点に注意が必要です。これは、まだ家が建っていない新築物件の場合、固定資産税評価額が算出されていないためです。ただし、不動産の営業担当者に聞くとおおまかな金額が把握できることがあります。気軽に相談してみましょう。
なお、中古物件は既に家が建っているため自力でも調べられますが、役所で手続きをする必要があり、手間がかかります。そのため、中古物件の場合も不動産仲介会社の営業担当者に質問することがおすすめです。
固定資産税評価額の決まり方
ここからは固定資産税評価額の決まり方について解説します。固定資産税評価額を決める方法は建物と土地で異なります。具体的に見ていきましょう。
土地の場合
土地の評価額を決める主な流れは以下の通りです。
[ 1 ]地域の区分けをし、指標とする街路を決める
[ 2 ]街路に隣り合う宅地から標準宅地を決める
[ 3 ]公示価格の7割を目安に標準宅地の時価を設定する
[ 4 ]街路の路線価(ある道路に面する1㎡あたりの土地の価格)を設定する
[ 5 ]宅地の奥行における補正を行う
形状やエリア、周辺環境などが影響するため、土地は広さが同じでも評価額は異なることが一般的です。
建物の場合
建物の固定資産税評価額は「再建築価格方式」を利用して計算されます。再建築価格方式とは現在の建物を、全く同じ材料と構造で建て直した際にかかる費用を算出して評価する方式です。
再建築価格方式ではまず、建物の再建築費用を部分別に算出し、それを合計して建物全体の費用を求めます。さらに、家屋の経年劣化を考慮した補正率を乗じることで固定資産税評価額を算出します。
なお、建物の構造や材料なども評価額に影響するため、建物は地域や敷地面積、延床面積が同じであっても、評価額が異なる場合があります。建設のためにかかるコストが高いほど、評価額も高くなることが一般的です。たとえば、木造よりも鉄筋コンクリート造や鉄骨造のほうが高評価になる傾向があります。
固定資産税評価額を使用して算出できる税金
固定資産税評価額がわかると固定資産税のほか、さまざまな税金の金額を計算できます。ここでは算出できる税金の種類や計算方法について詳しく解説します。
固定資産税
固定資産税とは毎年1月1日時点で所有している建物や土地といった不動産に課される税金のことです。固定資産税の税率の目安は、土地も建物も一律1.4%に設定されています。ただし、税率は市町村によって異なる場合があるため、自治体のホームページを確認しておくと安心です。固定資産税の計算方法は以下の通りです。
固定資産税 = 固定資産税評価額 × 1.4%(標準税率)
固定資産税の詳しい計算方法や、軽減措置を受けられる条件などについてはこちらの記事で解説しているので、チェックしてみてくださいね。
●固定資産税の納税方法や税金の目安に関する記事はこちら
固定資産税の相場や計算方法、軽減措置などについて詳しく解説します。
都市計画税
都市計画税とは都市計画法で定められた市街化区域内に不動産を所有している人に課される税金のことです。都市計画税は固定資産税と同時に納税することが一般的です。都市計画税の計算式は次のようになります。
都市計画税 = 固定資産税評価額 × 0.3%(制限税率)
税率の上限は0.3%ですが、自治体によっては低く設定されていることもあるため、自治体のホームページを確認することをおすすめします。都市計画税の詳しい計算方法や、軽減措置を受けられる条件などについては以下の記事をご覧ください。
●都市計画税の概要や計算方法、軽減措置に関する記事はこちら
都市計画税の基礎知識や計算方法、軽減措置を受けられる条件などについて詳しく解説しています。
不動産取得税
不動産取得税は不動産を取得するタイミングで納税する税金のことです。計算方法は以下の通りです。
不動産取得税 = 固定資産税評価額 × 4%
不動産取得税の税率は原則4%と定められていますが、軽減措置が実施されている期間内であれば税率が引き下げられます。不動産取得税については以下の記事で詳しく解説しています。
●不動産取得税の基礎知識や軽減措置を受ける方法に関する記事はこちら
不動産取得税に関する基礎知識や、軽減措置を受けられる条件について解説しています。
●不動産取得税を納税する時期や計算方法に関する記事はこちら
不動産取得税の支払いが必要となるタイミングを中心に、納税額の計算方法について詳しく解説しています。
登録免許税
登録免許税とは不動産の所有権を登録する際に納税する税金のことです。不動産の所有権を登録することを「不動産登記」と呼び、主に3種類に分類されます。
・所有権保存登記…建物を新築する際に新規で所有権を登録する手続き
・所有権移転登記…既存の建物の所有権を別の人に移す手続き
・抵当権設定登記…住宅ローンを組む際に、金融機関が不動産を担保にとるための手続き
登録免許税を計算する際にも固定資産税評価額が使われますが、不動産登記の種類や取得状況によってそれぞれ税率が異なります。登録免許税については以下で詳しく解説しています。
●登録免許税の仕組みや最新の軽減措置に関する記事はこちら
登録免許税の基礎知識や計算方法、軽減措置について分かりやすくまとめています。
固定資産税を抑えるポイント
固定資産税評価額をもとに算出される固定資産税は、特例を利用すれば抑えることが可能です。ここでは3つの特例について詳しく紹介します。
住宅用地の特例
住宅用地の特例とは、住宅用地に建設されたマンションや一戸建ての場合、土地の固定資産税が軽減できるというものです。住宅用地とは、居住を目的として使用されている土地のことで、住宅用地のなかでも、敷地面積によって軽減額は異なります。具体的な軽減額は以下の表の通りです。
敷地面積 | 軽減額 |
---|---|
小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 固定資産税の6分の1 |
一般住宅用地(200㎡を超える部分(家屋の床面積の10倍まで)) | 固定資産税が3分の1 |
この表に従って実際にシミュレーションしてみましょう。500㎡の住宅用地の場合、小規模住宅用地は200㎡、一般住宅用と300㎡となるので、計算式は「200㎡ × 6分の1 + 300㎡ × 3分の1」となります。なお、住宅用地の特例は更地になっていたり、建物が住宅として使用されていなかったりすると適用されないため注意が必要です。
新築住宅における特例
新築住宅の場合に利用できる特例があります。これは新築住宅を購入後、一定の間、固定資産税が2分の1に軽減されるというものです。軽減される期間は物件の種類によって異なるので、以下の表を確認しておきましょう。
物件の種類 | 期間 |
---|---|
一戸建て | 3年間 |
マンション | 5年間 |
認定長期優良住宅の一戸建て | 5年間 |
認定長期優良住宅のマンション | 7年間 |
なお、減税が適用されるのは2024年3月31日(令和6年3月31日)までに建築された物件に限られます。
改修した住宅における特例
建築されてから10年以上が経過する物件において、改修やリフォームを行った場合にも、特例を受けられることがあります。対象となる主なケースは以下の通りです。
・大規模な修繕・模様替え
・耐震リフォーム
・バリアフリー改修
・省エネ改修
対象となる物件の詳細は国税庁のホームページで確認できます。改修やリフォームを行った方や、検討している方は一度チェックしましょう。
固定資産税評価額を把握しよう
ここまで固定資産税評価額の調べ方や決まり方、固定資産税を軽減する方法などについて解説してきました。固定資産税評価額は固定資産税をはじめとした、さまざまな税金を算出するうえで欠かすことのできない指標です。土地や建物などの不動産を所有している方は、毎年市町村(東京23区の場合は東京都)から送付される課税明細書を大切に保管しておきましょう。
この記事で解説してきた固定資産税評価額に関する情報をもとに、所有している不動産にかかる税金がどれくらいになるのか、ぜひチェックしてみてくださいね。
情報提供:税理士 宮原 裕徳
株式会社ラムチップ・パートナーズ代表取締役。税理士。LAMTIP PARTNERS(Thailand) Co., Ltd. CEO日本と東南アジアの不動産にかかわる会計・税務に詳しい。法人や個人向けに、無駄な税金を払わないための節税対策セミナーなども行う。