マンション購入ガイド
土地価格の種類や調べ方は?近年の動向についてもチェック
マイホームの購入を検討しており、住みたいエリアの土地の価格を調べようと思っています。ですが、土地価格にはさまざまな種類があると聞きました。どのようなものがありますか?

土地の価格は5種類あります。「公示地価」「基準地価」「相続税路線価」「固定資産税評価額」「実勢価格」の5つです。これら5つの価格はそれぞれ数値が異なるため、利用目的に応じて使い分けが必要です。今回は土地価格の種類や特徴、調べ方について詳しくご紹介していきます。
情報提供:税理士 宮原 裕徳
目次
土地価格の種類とは?
家の購入や売却にあたり、土地価格の種類や特徴を知っておくことは重要です。家の価格を決める際は、建物の価格だけでなく、土地の価格も大きくかかわってくるからです。
特に家の購入を検討している人は、「予算的にどのエリアがおすすめか」「ここ数年の土地価格の推移はどうなっているのか」などが気になることでしょう。今回はそんな人に向けて、土地価格の種類や調べ方について解説していきます。
前述の通り、まずは土地価格の種類を知っておきましょう。
土地価格の種類を示す「一物五価」という言葉をご存じでしょうか?これは、「同じ1つの土地でも5種類の価格が付いている」という意味を表していて、その言葉通り土地には5種類の価格があります。それぞれの土地価格について以下の表で簡単にご紹介します。
土地価格 | 概要 | 決定機関 | 評価時期 |
---|---|---|---|
公示地価 | 土地取引の目安になる価格 | 国土交通省 | 毎年1月1日 |
基準地価 | 土地取引の目安になる価格 | 都道府県 | 毎年7月1日 |
相続税路線価 | 相続税や贈与税の基準になる価格 | 国税庁 | 毎年1月1日 |
固定資産税評価額 | 固定資産税や不動産取得税などを算出するために基準となる価格 | 市区町村 | 毎年1月1日 |
実勢価格 | 実際に取引された(される)価格 | 当事者間 | その都度 |
それぞれの価格について、詳しい内容は後述しますのでそちらをご覧ください。

全国規模での価格変動の動向は?
これから土地の購入を考える人にとって、押さえておきたいのが近年の土地価格の推移でしょう。土地の価格は、経済状況や社会情勢によって大きく変動することがあります。
過去に起こった大きな変動としては、1991年のバブル崩壊や2008年のリーマンショックで、価格が下落傾向になりました。一方で、2012年のアベノミクスや2013年の東京五輪開催決定によって、価格が上昇傾向になったこともあります。
さらに、直近では2020年の新型コロナウイルスの影響によって、全国的に価格が下落傾向になりました。価格が下がった要因としては、緊急事態宣言による不動産の販売活動停止や、国内外からの旅行者の減少があります。しかし、リモートワークや外出自粛の広まりで自宅購入のニーズが高まったことにより、住宅地に限れば大きな価格の下落はありませんでした。
このように、土地の価格は経済状況や社会情勢によって左右されることがあります。土地を購入する場合は、土地価格の動向を押さえておくと、資金計画を立てるうえでも役立つでしょう。

目的に合った土地価格を調べよう
前述のように、土地には5つの価格があるため、価格を調べる際は目的に合ったものを選ばなくてはなりません。どのようなときにどの価格を参考にするか、具体的にお伝えしましょう。
売買するなら
所有している土地を売却したり、購入したい土地の価格の見当を付けるときには、「公示地価」「基準地価」「実勢価格」を用います。
それぞれの価格の役割として、公示地価は査定額の妥当性を判断するのに役立ちます。基準地価は公示価格と違って、その土地の周辺地域を考慮した価格であり、評価時期も異なるため、公示価格の補完として用いられることが多いです。公示地価と基準地価の両方を比較することで、評価の動向を計ることができるでしょう。
実勢価格は、実際に取引が成立する価格であり、公示価格の1.1倍〜1.2倍が目安とされています。価格相場を把握するうえで非常に有用ではありますが、売主の希望や経済状況によって、実際の売り出し価格とは異なる場合もあるので注意しましょう。
相続するなら
相続の際に適用する土地価格を知りたい場合は、相続税や贈与税を算出する基準となる「相続税路線価」を使用します。ちなみに、相続税は被相続人(亡くなった人)から相続される財産にかかる税金です。また、贈与税は個人から経済的価値のあるものを受け取った際にかかる税金です。相続税路線価は、毎年1月1日を基準日として7月初旬に国税庁から公表され、公示地価の8割が目安とされています。
相続税路線価に似た言葉として「固定資産税路線価」があります。しかし、これは土地の固定資産税評価額の計算に使用される価格であり、相続の際に使用する価格とは異なります。
納税額を知るには
所有している土地にかかる税金を知るには、固定資産税を算出する基準となる固定資産税評価額を使用します。固定資産税以外にも、都市計画税や不動産取得税などの税金の算出にも用いられます。固定資産税評価額は、毎年1月1日を基準日として3月~4月に市区町村から公表され、公示地価の7割が目安とされています。
土地にかかる税金としては以下のようなものがあります。
・固定資産税
・都市計画税
・不動産取得税
・登録免許税
これらの税金について詳しく知りたい場合は、以下の記事も併せてご覧ください。
●固定資産税に関する記事はこちら

固定資産税の納税方法や税金の計算方法についてご紹介しています。
●都市計画税に関する記事はこちら

都市計画税の概要と計算方法についてご紹介しています。
●不動産取得税に関する記事はこちら

不動産取得税の計算方法や、軽減措置についてご紹介しています。
●登録免許税に関する記事はこちら

登録免許税の計算方法や最新の軽減措置についてご紹介しています。

土地価格の調べ方を知ろう
目的に応じて使用する土地価格を確認したら、次は土地価格を実際に調べてみましょう。実勢価格以外の土地価格は、国や地方自治体が定期的に管理や更新をしています。
公示地価と基準地価
公示地価・基準地価は国土交通省が管理や更新をしている「土地総合情報システム」のページ内にある、「地価公示都道府県地価調査」から確認できます。そのほかにも、公示地価は全国地価マップでも確認でき、基準地価は各都道府県のホームページでも確認できます。
路線価(相続税路線価)
相続税路線価を調べるには2つの方法があります。
1つ目は国税庁のホームページにある「路線価・評価倍率表」で確認する方法です。この方法は、過去6年分のデータが分かるので過去のデータも併せて確認したい人におすすめです。
2つ目は資産評価システム研究センターが管理している「全国地価マップ」で確認する方法です。市区町村または郵便番号を入力するだけで調べられますので、早く確認したい人におすすめです。
固定資産税評価額
固定資産税評価額は、「固定資産税納付書」あるいは「課税明細書」で確認できます。これらは、不動産の所有者へ毎年4月~6月に市区町村から送られてくるので忘れないようにしましょう。紛失してしまった場合は、都税事務所や地区町村役場で入手可能な「固定資産評価証明」で確認できるので、覚えておきましょう。
実勢価格
実勢価格も「土地総合情報システム」のページ内にある「不動産取引価格情報検索」から確認できます。都道府県や市区町村を選択すると、地図上で過去にその土地がいくらで取引されていたかを確認できるので便利です。そのほかにも前述した通り、路線価や公示地価から実勢価格の目安を概算できます。

土地価格を調べるときのポイント
これまでは、土地価格の種類や調べ方をご紹介してきました。そこで併せて知っておきたいのが、土地価格の決まり方と、調べる際の注意点です。それぞれについて以下で詳しくご紹介していきますのでしっかり確認しましょう。
土地価格に影響を与える要因
土地価格に影響を与える要因は次の3つがあります。
●個別的な要因
個別的な要因とは、面積や形、高低差など土地そのものの性質や特徴に関する要因です。一般的には、形が整っていて間口が広く、広い道路に面していると土地価格は高くなる傾向にあります。
●環境的な要因
環境的な要因とは、その土地の周辺環境に関する要因です。具体的には、その土地から最寄り駅までの近さや町の人口、施設などが影響します。一般的には、商業施設や文教施設が充実していて利便性もよいと、土地価格は高くなる傾向にあります。
●社会的な要因
社会的な要因とは、国や行政による経済政策や税法の改正、五輪開催などのような、社会情勢に関する要因です。過去には、バブル崩壊やリーマンショックで土地価格が一気に下落したこともあります。ここ数年では、新型コロナウイルスによって土地価格の変動がありました。

売買価格の見当を付ける際の注意点
土地価格の相場と実際の売買価格は異なります。土地を売却したい人は、相場を確認しつつ、複数の不動産会社に査定を依頼して信頼できる会社を選び、相談のうえ売り出し価格を決定するのが一般的です。
一方で、土地の購入を検討している人は、調べた相場通りに売り出されないこともあるので、あくまでも相場は目安であることを認識しておくことが重要です。
土地価格を知り資金計画に役立てよう!
これまでご紹介してきたように、土地価格の種類や調べ方はさまざまです。そのため、目的や状況に合わせた最適な調べ方を知ることが重要です。土地価格が分かれば、それを踏まえて必要な資金の目安が立てられます。
また、土地にかかわる税金については、いくつかの特例措置もあり、これらを活用することで土地の取得時にかかるコストを抑えることができます。ただし、特例措置によって期限や条件が異なるため、あらかじめよく確認しておきましょう。
土地の購入は、決して安い買い物ではありません。後になって後悔しないように知識を深めて、価格をしっかりと把握して、上手な資金計画を行いましょう!

情報提供:税理士 宮原 裕徳
株式会社ラムチップ・パートナーズ代表取締役。税理士。LAMTIP PARTNERS(Thailand) Co., Ltd. CEO日本と東南アジアの不動産にかかわる会計・税務に詳しい。法人や個人向けに、無駄な税金を払わないための節税対策セミナーなども行う。