マンション購入ガイド
オートロック付き住まいの安全性は?メリットや注意点を解説!
家の購入を検討していますが、一戸建てかマンションかで迷っています。オートロックの付いているマンションのほうがおすすめだと友人から聞きました。オートロックが付いていれば、セキュリティが高いことはイメージできるのですが、実際にセキュリティ面では安心なのでしょうか?ほかにも注意点があれば教えてほしいです。
共用玄関にオートロックがあるマンションでは、扉が自動的に施錠されるため、建物内への侵入は鍵を持つ人、建物内にいる人から許可された人だけに制限されます。そのため、防犯性が高まりますが、オートロックがあるからといって「100%安心」せずに、防犯意識を持つことは必要です。
情報提供:不動産コンサルタント 秋津 智幸
目次
オートロックとは?
オートロックとは、扉が閉まると自動的に施錠する仕組みを持った鍵や扉などのシステムのことです。特にマンションやアパートなどの共同住宅では、来訪者は居住者の確認なしに建物内に入ることができない仕組みになっていることが多いです。
オートロック式(住宅)の定義として、国土交通省では「建物内に共用玄関のドアがあり、外からドアを開けるためには、鍵や暗証番号などを用いるか、居住者などに内側から鍵を解除してもらう必要がある共同住宅」※1としています。
また、オートロックには、暗証番号を入力するタイプやカードを認証させるタイプなど、さまざまな種類があります。いずれにしてもドアが開いた後に一定時間が経過すると、自動的に施錠される仕組みは変わりありません。
共同住宅の共用玄関のドアが自動的に施錠されることで、まず建物内に不審者や訪問営業など居住者以外の入館許可のない人の侵入を防ぐことができ、加えて各住戸の玄関ドアを居住者が施錠することで、二重に不審者の侵入を防ぐことが可能です。その結果、オートロックの設置されたマンションやアパートなどの共同住宅では、2段階施錠となるので防犯性が高まることになります。
一方、一戸建てでも、注文住宅なら新築時に、建売住宅や中古住宅ならリフォームすることで、オートロック式の玄関ドアを採用することができます。
オートロックの種類と特徴
オートロックには、解錠の方式によって特徴の異なるものが数種類あります。それぞれセキュリティの高さや使い勝手などが違うため、しっかりと確認しておきましょう。 なお、オートロック付きマンションの場合、来客時にお客さまに外から鍵を開けて入ってもらうことができないため、インターホンで対応し、部屋から解錠を行う必要があります。
集合キー式
集合キー式は、一般的には各住戸の玄関鍵と同じ鍵で共用玄関も解錠できる方式です。集合キーの特長としては、1つの鍵で住戸の玄関の施錠・解錠と共用玄関の解錠ができるため、鍵を複数持つ必要がないことが挙げられます。
ただし、集合キーは、建物の全住戸の玄関鍵で共用玄関も解錠できるようにするため、鍵のパターンをあまり複雑にできません。そのため、この後ご紹介するほかの種類と比べて、比較的簡単に鍵を複製できてしまう可能性がある点に注意しましょう。
暗証番号式
暗証番号式は、あらかじめ設定された0から9までの数字と「※」や「#」といった記号で構成された暗証番号を入力して解錠する方式です。暗証番号式は、鍵やカードなどを携帯しておく必要がないため、暗証番号を忘れないあるいは知らぬ間に変更されない限り締め出される心配がありません。
しかし、万一、暗証番号がわからないと解錠できなくなってしまうほか、連続で誤った暗証番号を入力しても、一時的に入れなくなってしまうことがあるため、番号を忘れないよう管理しておくことが必要です。
また、暗証番号を誰かに盗み見され、使われてしまうと、部外者でも簡単に侵入できてしまうため、暗証番号を入力する際は周囲に不審な人がいないか確認するようにしましょう。
カードキー式
カードキー式は、カードをかざしたり、差し込んだりすることで解錠する方式です。カードキーは一般的な鍵と比べて薄く、カード型であるため、財布やスマートフォンケースなどに入れて簡単に持ち運びができる点が魅力といえるでしょう。
ただし、磁気カードキーの場合、クレジットカードやキャッシュカードなどと混在して保管すると、磁気不良により読み取りにくくなる可能性があり、普通の鍵と比べて破損しやすいという点には注意が必要です。万一、紛失や破損により再発行が必要になった際は、一般的な鍵よりも高額な費用がかかる傾向にあります。
この方式のものは、ビジネスホテルや事務所ビルではよく見かけますが、上記のような注意点があるため、分譲マンションではあまり採用されていません。
ノンタッチ(非接触)式
ノンタッチ(非接触)式は、鍵のヘッド部分やタグ、カードなどにICチップが埋め込まれており、受信器に鍵やタグなどをかざすことで解錠する方式です。キーレスエントリー方式ともいわれ、最近の分譲マンションではよく採用されています。
鍵やタグなどを紛失した場合でも、紛失した鍵やタグなど限定して簡単に無効化できる点が特長です。また、鍵の電子的な組み合わせは数億通り以上となり、セキュリティ面でも非常に安心できるといえるでしょう。そのうえ、非接触式なので鍵やタグ、カードなどの発信側と読み取り部分とも摩耗することもありません。
ただし、カードキー式と同様に、鍵やカードなどを紛失して再発行が必要になった際は、一般的な鍵よりも高額な費用がかかる傾向にあります。
また、非接触式のオートロックの1つとして、近年ではスマートフォンのアプリケーションと連携して外部から開け閉めができるスマートロックも普及してきています。IT制御の技術が急激に進化しており、通信による認証が行われ、鍵が解錠されるという仕組みです。
物理的な専用鍵(鍵やカードなど)がなくても、スマートフォンで扉の開閉ができるという特長のほか、スマートフォンのアプリケーションで鍵の状況が確認できる、あらかじめ設定された時間に自動で鍵が開閉されるといった種類のものもあります。このような非接触式で物理的な専用鍵がない種類のオートロックは、鍵の管理が遠隔で可能なため、分譲マンションと比べて入居者の入れ替わりの多い賃貸マンション、特に最新の設備を導入した賃貸マンションで見られるようになってきています。
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賃貸の最新施錠システムに関して、種類や特徴をご紹介しています。
生体認証式 生体認証式は、指紋や顔などの生体情報をセンサーで読み取って解錠する方式です。生体情報を複製することは困難なため、セキュリティ面で非常に安心できるといえるでしょう。また、鍵やカードを持ち運ぶ必要がないうえに、暗証番号をうっかり忘れて入館、入室できないという心配もありません。
しかし、生体認証式のオートロックは、今はまだ認証精度が100%ではないため、肌や顔の状態や光や影といった読み取り時の環境によっては読み取りにくくなる可能性があります。また、一般的なマンションではあまり普及しておらず、基本的には一部の高級マンションでのみ導入されています。
メリット | 注意点 | |
---|---|---|
集合キー式 | ・1本の鍵で共用玄関を解錠できる | ・鍵の複製が比較的しやすい |
暗証番号式 | ・鍵を持ち歩かなくてもよい ・鍵の複製リスクがない |
・暗証番号を覚える必要がある ・連続で番号を間違うと一時的に入れなくなる ・暗証番号を盗み見される可能性がある |
カードキー式 | ・持ち運びがしやすい ・鍵の複製リスクが少ない |
・破損しやすい ・再発行の際に高い費用がかかる傾向にある |
ノンタッチ式 (非接触式) |
・鍵や受信部が摩耗しない ・紛失した鍵を無効化できる ・鍵の複製リスクが極めて少ない |
・再発行の際に高い費用がかかる傾向にある |
生体認証式 | ・鍵を持ち歩かなくてもよい ・暗証番号を覚える必要がない ・鍵の複製リスクがほとんどない |
・肌や顔の状態によっては読み取りにくくなる可能性がある |
オートロックのあるマンションのメリットは?
オートロック付きのマンションには、どのようなメリットがあるのでしょうか。代表的なものをご紹介します。
不審者の侵入を防げる
オートロックが付いたマンションでは、鍵を持つ居住者か、住戸内にいる居住者から解錠してもらった人以外は共用玄関から建物内に入れないため、見知らぬ人は共用玄関から先に入れません。また、空き巣やストーカーといった不審者の建物内への侵入も防ぐことができます。特に空き巣の場合、開錠に手間取るオートロック付きの住宅というだけで諦めることも多く、より安心して暮らすことができるでしょう。
当然ながら、オートロック付きのマンションでは、建物の周囲はフェンスや塀、植栽で囲われ、正面エントランス以外の出入り口も鍵を持っていなければ、建物内へ侵入することができなくなっています。
さらに、マンションによっては、オートロックのドアが二重、三重に設置されているところもあり、その場合はセキュリティがよりしっかりしているといえます。
訪問営業を回避しやすい
オートロック付きの共同住宅では、鍵を持つ居住者か、住戸内にいる居住者から解錠してもらった人以外は共用玄関から建物内に入れないので、訪問営業は共用玄関のインターホン越しに対応することができます。各住戸から共用玄関まで距離があるため、心理的にも安心できるでしょう。扉1枚隔てた玄関越しで営業されると何となく断りにくいという人には、より安心できるシステムです。
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マンションのエントランスに関して、役割やマンション購入するときに確認すべきポイントを解説しています。
また、モニター付きのインターホンの場合は、インターホンのモニター越しに相手を確認できるので、たとえば女性の単身世帯なら、知らない相手には対応せず、居留守を使うこともできます。こうしたケースが多いため、訪問営業の人はオートロック付きの住宅を避ける傾向があります。
安心感が高まる
マンションにオートロックが付いていることによって、鍵を持つ居住者か、住戸内にいる居住者から解錠してもらった人以外の人が住戸の前まで来ることが難しいため、オートロックのない住宅と比べると、防犯面において安心感が高くなります。
また前述した通り、オートロック付きのマンションの多くは、塀やフェンス、植栽などで建物が完全に囲われており、建物内に入るためには鍵を開ける必要があります。そのほか、オートロック以外にも防犯カメラや人感センサーライトなどの防犯設備やサービスを導入していることが多く、その場合はさらに安心感が高まるでしょう。
オートロックのあるマンションでの注意点は?
オートロックのあるマンションは、メリットだけではなく注意点もあります。ここからは、押さえておくべきオートロックの注意点をご紹介します。
絶対安全というわけではない オートロックがあることで、セキュリティは向上しますが、100%の安全が保証されるわけではありません。よくある手口として、居住者がオートロックを開けた際に、不審者が居住者のふりをして一緒に侵入することや、居住者が建物に入った後、まだオートロックが開いている短い間に不審者が建物内に侵入するということがあります。共用玄関を解錠する際は、周囲に不審な人物がいないかを確認してから入るようにしましょう。
また、先にお伝えした通り、鍵を複製されたり、暗証番号を盗み見されたりすれば、部外者が建物内に侵入できてしまいます。なかでも、集合キー式の場合は鍵のパターンがそれほど複雑ではないので、比較的簡単に複製できてしまう可能性が高いといえます。100%安全とは限らないとわかったうえでオートロック付きマンションを検討するようにしましょう。
鍵やカードの紛失に気を付けるのはもちろんのこと、持ち歩きが必要のない暗証番号キーの場合も注意が必要です。暗証番号を入力する際は、周囲を警戒して入力することで、暗証番号を盗み見されないよう注意しましょう。
万が一、不審な人物を見かけた場合は、いったん建物の外に出て様子を見ることをおすすめします。加えて、見たことのない人を玄関で見かけた場合は、あいさつをしてみるのもよいでしょう。不審者は声をかけられることを嫌がる傾向にあり、侵入を断念する可能性もあります。
鍵を持っていないと建物内に入れない
集合キー式やカードキー式などの場合、鍵やカードを紛失したり、携行するのを忘れたりすると建物に入れなくなってしまいます。自分で解錠できない場合は、部屋の中にいる家族に解錠してもらうか、場合によっては、管理人や管理会社に連絡をし、対応してもらう必要があります。
なお、建物内に入れないことに焦って、無理に建物内に侵入しようとすると、かえって大きなトラブルに発展する可能性があります。柱や壁を無理に越えて侵入しようと試みたり、むやみにほかの部屋のインターホンを鳴らしたりといった行為は、不審者だと間違われてしまうため、控えるようにしましょう。
配達物を集合郵便受けまで取りに行く必要がある
オートロックが付いている共同住宅では、新聞や郵便物、宅配便の配達員もそのままでは建物内に入ることができません。そのため、一般的には共用玄関の脇に設置されている集合郵便受けや宅配ボックスまでの配達となります。従って、自分宛てに届いた新聞や郵便物、宅配便は、集合郵便受けあるいは宅配ボックスまで取りに行く必要があります。
また、宅配や書留などの場合、共用玄関で各部屋へインターホン越しに通話し、居住者が配達であることが確認できれば、オートロックを解錠して、部屋まで配達してもらうことが可能です。
●宅配ボックスに関する記事はこちら
宅配ボックスに関して、メリットや注意点などの特徴など基本情報をご紹介しています。
管理費や修繕積立金が割高になる
オートロック付きのマンションは、付いていないマンションと比べると、設備の維持にコストがかかるため、管理費や修繕積立金が少し高くなる傾向にあります。
管理費や修繕費がかかりますが、オートロックがあることで、安心を買っていることは確かです。マンションを購入する際は、住宅に求める条件とその優先度を整理してみるとよいでしょう。
停電時に部屋に入れなくなる可能性がある
地震や台風、落雷などの災害によって停電してしまった場合は、オートロックが正常に作動しなくなる可能性があります。
オートロックには、停電時に「解錠された状態になるタイプ」と「停電時の状態のままになるタイプ」の2種類があり、解錠された状態になるタイプの場合は、停電時でも手動で扉を開閉することが可能です。一方で、停電時の状態のままになるタイプのオートロックでは、停電時に施錠されていれば、解錠できない状態になります。
鍵穴に鍵を差し込む鍵の場合、停電時でも使用できるものもありますが、非接触タイプのICカードやタグキーを用いている場合は、停電時には完全に扉を解錠できなくなってしまいます。そのため、万一に備えて、非接触式の鍵と一般的な鍵穴式の鍵を併用しているオートロックの場合は、カードやタグだけでなく一般的な鍵も持ち歩くと安心です。
なお、オートロックのなかには、停電しても非常用バックアップ電源が働き、復旧を待たなくても通常通り作動し続けるものもあります。物件を選ぶ際には、停電時にどのような対応が必要になるのかも併せてチェックするとよいでしょう。
内覧時のチェックポイントは?
ここからは、オートロック付きのマンションを内覧する際のポイントについて紹介します。
●内覧に関する記事はこちら
内覧の申し込み方法や、見るべきポイントについてご紹介しています。
オートロックの数や種類を確認する
内覧をする際は、できればオートロックがどこに何箇所設置されているか、またオートロックの種類も確認しましょう。先にご紹介したようにオートロックの種類によって、鍵の管理や利用方法が異なってきます。オートロックの利用はそのマンションに暮らすことになれば、毎日のことなので、しっかりと確認しておきたいものです。
また、大規模修繕の実施が近い中古マンションの場合、オートロックの更新、改修が予定されていることもありますので、その場合はどのような種類のオートロックに変更となるか、確認しましょう。
共用玄関以外からの侵入経路を確認する
共用玄関にオートロックが付いており、その部分のセキュリティが高くても、玄関以外から建物内に侵入できてしまう物件もまれにあります。建物を囲む塀やフェンスの高さや植栽の隙間、鍵のかかっていない裏口や非常口、駐車場や駐輪場につながっている扉など、鍵を使わずに出入りできる経路がないかも確認するようにしましょう。
防犯カメラの設置箇所を確認する
これまでご紹介したように、オートロックが付いているだけでは、安心できません。オートロック以外にも防犯カメラの設置の有無や設置個所、台数の確認も、マンションのセキュリティを確認するうえで非常に重要です。
また、防犯カメラは種類や性能がさまざまで、録画の可否、録画時間、遠隔での確認など、機能によって防犯性の高さが大きく異なります。気になる場合は、防犯カメラの機能も確認するとよいでしょう。
管理体制を確認する
防犯設備と併せて、管理体制も確認するようにしましょう。いくら防犯設備が整っていたとしても、それを管理する体制が伴っていないとセキュリティが保たれません。
たとえば、管理人や警備員が24時間常駐しているマンションと、日中しか管理人がいないマンションでは、人による監視という点でセキュリティの高さが異なります。
また、提携している警備会社があるかどうかを確認し、提携先がある場合、その会社も併せて確認するようにしましょう。
常時、裏口や非常口が開けっ放しになっている場合は、管理体制に問題があったり、居住者の防犯意識が低かったりする可能性があるため、注意が必要です。
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セキュリティの高いマンションの特徴や、オートロックの安全性に関してご紹介しています。
オートロックの特徴を押さえて安心できる暮らしを!
今回はオートロックについて種類やメリット、注意点などをお伝えしてきました。これまでご紹介してきたように、オートロック付きの住宅、特にマンションは、セキュリティに対する安心感が高いことは間違いありませんが、必ずしも安全というわけではありません。オートロックの種類やマンションと外部との境、居住者の意識によっては、部外者の侵入も可能となります。オートロック付きというだけで、セキュリティは万全と過信せず、実際に建物を見る機会があれば、防犯カメラや管理体制などもチェックすることをおすすめします。
オートロックはあくまでも、防犯対策の1つにすぎないということを理解して、常に高い防犯意識を持つようにしましょう!
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※1出典:国土交通省:「平成30年 住生活総合調査結果」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001358448.pdf
(最終確認日:2023年3月6日)
情報提供:不動産コンサルタント 秋津 智幸
不動産サポートオフィス
代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。不動産コンサルタントとして、物件の選び方から資金のことまで、住宅購入に関するコンサルティングを行なう。
HP:http://2103-support.jp/?page_id=14