マンション購入ガイド
住宅ローンの連帯債務とは?連帯保証やペアローンとの違いを解説!
マイホームの購入を検討していますが、夫婦で住宅ローンを組む方法の1つとして、連帯債務という方法を目にしました。どのような方法か教えてください。
住宅ローンにおける連帯債務とは、主債務者と連帯債務者の収入を合算し、2人で1本のローンを組む方法のことです。借入可能額を増やせるのが特長ですが、注意点もあります。利用については、メリットと注意点の両方を知ったうえで慎重に検討しましょう。
情報提供:税理士 宮原 裕徳
目次
連帯債務とは?
マイホーム購入時に気がかりなことの1つは、住宅ローンでしょう。住宅ローンにはさまざまな種類がありますが、共働き夫婦であれば、収入を合算して住宅ローンを組むことも可能です。その選択肢の1つに「連帯債務」という方法があります。連帯債務とは、主債務者と連帯債務者をつくり、それぞれが住宅ローンの債務全額を負って、返済する方法のことです。
住宅ローンにおける連帯債務では、主債務者と連帯債務者が1つの住宅ローンの債務をそれぞれ同等に負う責任があり、連帯債務の負担割合は、対象の不動産の持分割合で決まるのが一般的です。持分割合とは、複数人で所有している不動産の所有割合のことで、ローンや頭金を含めて、不動産価格に対して負担する割合を指します。なお、住宅ローンが組まれる対象の不動産は、主債務者と連帯債務者との共有名義となります。
●共有名義の住宅ローン活用法に関する記事はこちら
共有名義を利用した住宅ローンの組み方やそのメリットなどについてご紹介しています。
また、連帯債務の場合、借入可能額は2人の収入を合算して審査されるので、1人で借りるよりも借入可能額が多くなります。そのため、家の建設を計画するうちに、間取りを大きくしたくなったり、設備のアップグレードをしたくなったりなど、当初の予算以上のお金が必要になったときに便利な住宅ローンの契約形態です。連帯債務を利用したときの具体的な借入可能額は、主債務者と連帯債務者の収入合算額から算出できます。
●住宅ローンの借入可能額・返済額の計算方法に関する記事はこちら
住宅ローンの借入可能額と毎月の返済額の計算方法についてご紹介しています。
連帯債務では、フラット35を利用することもできます。フラット35とは、住宅金融支援機構と民間の金融機関が提供している、最長35年の固定金利住宅ローンです。完済までずっと固定金利で返済することができるため、返済のめどが付きやすく、資金計画が立てやすいという特長があります。
連帯債務と連帯保証・ペアローンとの違い
夫婦2人で住宅ローンを借りる方法は、連帯債務のほかに「連帯保証」と「ペアローン」があります。ここでは、連帯債務との違いを表にして比較しながら、詳しく解説していきます。
項目 | 連帯債務 | 連帯保証 | ペアローン |
---|---|---|---|
契約上の 立場 |
住宅ローン契約者を 主債務者、もう1人を 連帯債務者とする |
住宅ローン契約者を 債務者、もう1人を 連帯保証人とする |
2人とも債務者 |
借り入れ の仕方 |
収入合算して1つの住宅ローンを契約 | 収入合算して1つの住宅ローンを契約 | 各々が住宅ローンを契約 |
返済口座 | 主債務者の口座から一括で引き落とし | 債務者の口座から引き落とし | 各々の口座から引き落とし |
諸費用 | 1契約分 | 1契約分 | 2契約分 |
住宅ローン 控除 |
2人とも可 | 債務者のみ | 2人とも可 |
団体信用 生命保険 |
原則、主債務者のみ | 債務者のみ | 各債務者で加入可 |
連帯保証との違い
連帯保証とは、1人が債務者、もう一方が債務者の連帯保証人になって、1つの住宅ローンを利用する方法です。連帯債務は夫婦それぞれが同時に返済していく方法なのに対して、連帯保証では、債務者が返済できなくなったときに連帯保証人が代わりに返済していくという流れになっています。このため、住宅ローン控除は債務者1人分のみしか適用されません。
ペアローンとの違い
2人とも同じ金融機関を利用する前提で、それぞれがローンを契約して債務者となるのがペアローンです。これも連帯債務と同じように収入合算で審査されます。しかし、連帯債務と異なり、住宅ローンの契約が2本分と見なされるため、手数料や事務手数料も2人分かかってしまうことに注しましょう。
ペアローンでは、お互いがお互いの連帯保証人となります。つまり、相手が払えなくなった場合、相手方の債務も含めて支払う必要があるのです。ただし、ペアローンであれば契約者の2人とも団信への加入が可能であるというメリットもあります。
ペアローンの利用条件は金融機関によってさまざまですが、一般的に夫婦や親子であれば組むことができます。加えて、金融機関によっては、同居予定の婚約者や同性のパートナーであってもペアローンを組めることもあります。場合によっては以上の関係性を証明する書類が必要なケースもあるため、あらかじめ情報を確認しておきましょう。
次項では、連帯債務を利用するために必要な条件について解説していきます。
連帯債務の条件
連帯債務を利用するためには、どのような条件を満たす必要があるのか、ここで確認していきましょう。
連帯債務者の条件
連帯債務者になれるのは、配偶者だけには限りません。たとえばフラット35では、連帯債務者の条件を次のように定めています。
・連帯債務を負うこと
・主債務者と同居していること
・主債務者の親、子、配偶者などであること
・申込時の年齢が70歳未満であること
このように、金融機関によって連帯債務者になれる条件は異なるため、希望の金融機関ではどのようになっているか確認してみましょう。
借入期間の条件
連帯債務者の条件を満たしていれば、収入を合算して申請できますが、収入を合算できるのは、主債務者と連帯債務者の年収全額になります。ただし、収入を合算すると、借入期間に影響を及ぼす場合があるため注意しましょう。
たとえば、フラット35における借入期間の上限は以下の通りです。
(※フラット35の借入期間の最長は35年)
借入期間の上限=80歳 ‐ 「次の1もしくは2のうち年齢が高いほうの申込時の年齢」
1:主債務者
2:連帯債務者(連帯債務者の年収の50%以上を合算した場合)
ここで、主債務者(30歳)の年収が400万円、連帯債務者(50歳)の年収が600万円だった場合を具体例にとってみましょう。
連帯債務者が合算する年収額を300万円(年収の50%以下)とする場合には、主債務者の年齢が基準となります。主債務者は30歳なので、80 ‐ 30をすると50年になりますが、フラット35の借入期間の最長は35年です。
一方で、主債務者(30歳)の年収が400万円、連帯債務者(50歳)が年収600万円を全額合算した場合、基準となるのは連帯債務者の年齢です。上記の計算式に当てはめると、借入期間は80 ‐ 50 = 30年となります。
連帯債務は離婚するときどうなる?
連帯債務は、夫婦間で主債務者と連帯債務者を決めるのが一般的です。しかし、住宅ローン返済期間中に離婚してしまった場合、契約関係はどうなるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
離婚しても原則として債務から外れることはできない
結論、離婚して、連帯債務者が別居することになっても、連帯債務から外れることはできません。なぜなら連帯債務は夫婦間の契約ではなく、夫婦と金融機関との契約であるため、離婚や別居といった夫婦の事情で契約から外れることはできないからです。
また夫婦間で話し合い、どちらかが住宅ローンを支払うと約束した場合でも、それはあくまで夫婦間の決めごとであるため、連帯債務から抜けられるわけではありません。もし住宅ローンの返済が滞ってしまった場合には、連帯債務者にも請求が来ます。
連帯債務から外れる3つの方法
前述のように、離婚しても原則として債務から外れることはできませんが、いくつか方法はあります。ここで、連帯債務から外れる方法について3つご紹介します。
●家を売却する
売却価格が住宅ローン残高を上回っていれば、売却価格でローンを清算することで、連帯債務から外れることができます。ただし、ローン残高が売却価格を上回った場合は、債務が残ってしまうので、自己資金で補わない限り売却しても連帯債務者の地位を抜けられません。この場合は、連帯債務の責任を負い続けるか、もしくは任意売却をして連帯債務から外れるかを選ぶことになるでしょう。
また、家の売却を検討する際は、主債務者と連帯債務者で協力することが必要不可欠です。家の査定額や住宅ローン残高などを参考にし、互いに協力しつつ慎重に進めるようにしましょう。
●住宅ローンの借り換えをする
住宅ローンの借り換えを行うことも方法の1つです。夫婦どちらか一方の名義で、新しい住宅ローンを組むことができれば、今までのローンの連帯債務者から外れることができます。しかし、この方法をとる場合は、新しい住宅ローンを組む際に、単独で住宅ローンの借り換え審査に通る必要があります。
夫婦の収入を合算して、ぎりぎりで住宅ローンを組んでいる場合、単独で新しいローンを組むのは厳しいというケースも多いため、注意が必要です。
●連帯債務者の差し替えをする
代わりの連帯債務者の候補を見つけて、金融機関が連帯債務者の変更を承認した場合、連帯債務の契約から外れることが可能です。ただし、代わりの連帯債務者を見つけるのには注意が必要で、もともとの連帯債務者と同程度、もしくはそれ以上の返済能力を持っており、信用に足る人物であることが求められます。
連帯債務者の候補者としては、たとえばその物件から出る人がいる場合、それ以降も住み続ける元配偶者の親族に依頼するケースはよくあります。あるいは、金融機関の承認が得られれば、土地や建物を担保にして連帯保証人の代わりにするといった方法もあります。
連帯債務のメリット
連帯債務は、収入合算して住宅ローン審査ができるので、借入可能額を増やせたり、控除額を大きくしやすかったりすることが特長です。以下で、メリットをより詳しく解説していきます。
借入可能額を増やせる
連帯債務は、単独で住宅ローンを利用するよりも借入可能額を増やせることが大きなメリットです。住宅ローン審査時に、主債務者と連帯債務者の収入を合計して、借入可能額の審査がなされるからです。
諸費用を抑えられる
連帯債務では、一人ひとり別々にローンを組む場合と異なり、住宅ローンにかかる費用を一本化できるので、ペアローンと比べて諸費用を抑えることができます。
連帯債務の注意点
連帯債務には多くのメリットがある一方、いくつか注意点もあります。主な3つの注意点について以下で具体的に見ていきましょう。
返済計画をしっかり立てておく必要がある
連帯債務は、各債務者がそれぞれ毎月返済しなければならないため、個人個人で自分の返済能力を把握して、返済計画を事前に立てておくことが必要です。また、個人で住宅ローンを利用するよりも借入可能額が増えるということは、毎月の返済額も増えることを意味しています。従って、連帯債務を利用するには、主債務者も連帯債務者も、ある程度安定した返済能力が必要であるといえます。
片方の返済が困難でも支払い額は減らせない
連帯債務は、主債務者と連帯債務者が独立して返済しているため、たとえ片方の債務者の支払いが困難になっても、毎月の返済額を減らすことはできません。
たとえば、病気や退職などによって働くことができず、収入がなくなったとしても、毎月の返済は行わなければなりません。育休や産休でも同様に、毎月の返済は続けていく必要があります。また、パートナーの収入がないからといって、連帯債務者が主債務者の返済を代理で行った場合は、贈与税を課税されてしまう恐れがあるため注意しましょう。
団信に加入できるのは原則1人のみ
団信(団体信用生命保険)とは、住宅ローン契約者が亡くなってしまったり、病気やけがで返済が不可能になってしまったりした際に、残債ローン分の保険金を支給され、返済を完了した状態にできる制度のことです。連帯債務では原則、主債務者のみが団信に加入することができます。加入できない連帯債務者は別途、生命保険等も検討しましょう。
ただし例外として、2人とも団信に加入できる連帯債務もあります。長期固定金利住宅ローンである、フラット35の「デュエット」という制度を利用することで、主債務者と連帯債務者共に団信に加入できます。「お互いの万が一に備えたい」という方は、フラット35のデュエットの利用を検討してみましょう。
●団信に関する記事はこちら
団信の概要や加入方法、注意点などについてご紹介しています。
利用時はパートナーとよく話し合うようにしよう
ここまで、連帯債務の概要やその特徴、注意点などについてご紹介してきました。連帯債務で住宅ローンを組むと、借入金額を増やすことができたり、主債務者と連帯債務者の両方が住宅ローン控除を利用できたりするなどのメリットがあります。ただし、メリットだけではなく、返済計画をきちんと立てる必要があるといった点も把握しておかなければなりません。
夫婦で住宅ローンを組む場合は、連帯債務だけでなく、連帯保証やペアローンを利用するという選択肢もあります。それぞれの特徴を理解し、自分たちに最も合う方法はどれか検討しましょう。
安心してマイホームを購入するためには、資金計画や経済状況をよく考えることが大切です。しかし、自分たちだけで考えたり決めたりすることに不安を抱えている方もいるでしょう。そのようなお悩みを持つ方は一度、長谷工の住まいアドバイザーに相談してみませんか?豊富な実績とノウハウを持ち合わせた担当者が、お客さまのマイホーム購入をサポートします。長谷工アーベストでは、無料でご相談を承りますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
●長谷工の住まいアドバイザーへの無料相談はこちら
住まい探しのプロである長谷工の住まいアドバイザーが住まい探しのご相談を無料でお受けしています!
●VRで物件を体験するにはこちら
自宅にいながら気軽にモデルルームを体験できる「Virtual Reality MODEL ROOM」です。憧れの住まいを自由にご覧いただけます。
●長谷工アーベストの住まい検索サイト「長谷工の住まい」はこちら
条件別にさまざまな物件を探すことができたり、住まいに関するお役立ちコンテンツをご提供したりしています。ぜひご活用ください!
情報提供:税理士 宮原 裕徳
株式会社ラムチップ・パートナーズ代表取締役。税理士。LAMTIP PARTNERS(Thailand) Co., Ltd. CEO日本と東南アジアの不動産にかかわる会計・税務に詳しい。法人や個人向けに、無駄な税金を払わないための節税対策セミナーなども行う。