マンション購入ガイド
年収600万円の住宅ローンを徹底解説!借入額を決めるポイントとは?
マイホーム購入を検討しているのですが、年収600万円で住宅ローンを組むことはできるのでしょうか。また、できるとしたら住宅ローンの借入額をいくらに設定するのがよいのでしょうか?設定する際の注意点やコツがあれば知りたいです。
年収600万円で住宅ローンを組むことは可能ですが、自分のライフプランに合わせた借入額を設定することが大切です。また一定の要件を満たせば、住宅ローン控除を利用することもできます。
情報提供:税理士 宮原 裕徳
目次
年収600万円でマイホームを購入するには?
「長年の夢だったマイホームを手に入れたいけど、年収600万円で住宅ローンが組めるかどうか不安…」そんな悩みを持っている人は、多いかもしれません。結論からお伝えすると、年収600万円でも住宅ローンを組むことは可能です。
しかし住宅ローンを組む際には、気を付けておくべきポイントがいくつかあります。たとえば、借入額や返済期間などです。
また住宅ローンを組む際に、自己資金がある程度用意できる人は、頭金というまとまった金銭を最初に支払うとよいでしょう。頭金は必ずしも必要なものではありませんが、物件価格の10%〜20%用意する場合が多く見られます。
ある程度のまとまった額を頭金で前払いすることによって、住宅ローンの借入額を抑えることができるため、数十年にわたる返済を円滑に進められる可能性が高くなります。現在の貯金額や、毎月の支出額から、自分はどれくらいの頭金を用意できるのかを事前に把握しておきましょう。
加えて、マイホームを購入する際には、地震保険料や固定資産税の支払いなどの諸費用がかかります。ほかにどんな支出が想定されるのか、主な諸費用を把握して住宅ローンを組むようにしましょう。
借入額の目安は年収の5~7倍程度
一般的に、住宅ローン借入額の目安は年収の5~7倍程度とされています。すなわち、年収600万円で住宅ローンを組む人の借入額の目安は、3000~4200万円程度となります。
しかし、地域によって平均収入が異なったり、世帯構成や住宅ローンの種類によっても違いがあったりするので、あくまでも目安の1つとしましょう。
また、住宅ローンの借入額を決定する際には、今後のライフプランを見据えておく必要があります。今後、転職や景気の悪化などにより年収が下がる可能性もあるでしょう。住宅ローンに加えて、同時にカーローンを組んでいる場合は、2つのローンを並行して払い続けられるかも見極めるようにしましょう。
借入限度額ギリギリまで借りるのはリスクが伴う
借りられるお金の上限額のことを借入限度額といい、契約者の年収や職業、金利によって変わってきます。年収600万円の人でも、条件によっては借入限度額が5000万円を超えることもありますが、借入限度額はあくまで借りられる上限額であり、余裕をもって返済し続けられる金額とは異なる点に注意しましょう。
万が一返済が滞ってしまった場合、遅延損害金として利息が発生する可能性があります。また最悪の場合、住宅が差し押さえられることもあるので、借入限度額まで借りるのはかなりリスクが高いといえます。前述の通り、借入限度額が、返済可能額ではないので、自分のライフプランを併せて考えながら、金額を設定するようにしましょう。
3600万円借り入れた際のシミュレーション
金利タイプには、大きく分けて「変動型」「固定期間選択型」「全期間固定型」の3種類があります。それぞれの違いは以下の通りです。
●変動型
変動型は、市場の金利に連動して半年ごとに金利が見直される金利タイプです。現在最も金利が低い金利タイプとなりますが、将来的に市場金利が上昇した場合、返済額も増加する可能性があります。なお、金利が上がった場合でも、5年間は毎月の返済額が据え置かれ、上昇したとしても1.25倍までに制限されるため、極端に毎月の返済額が増加するということはありません。しかし、返済総額の増加が制限されているわけではなく、あくまで負担を先送りにしているだけという点に注意しましょう。
●固定期間選択型
固定期間選択型は、借り入れ開始から2年、3年、5年、10年、15年などの一定期間のみ金利が固定される金利タイプです。固定期間終了後は自動的に変動型に切り替わりますが、再度固定期間型を選択することもできます。固定期間が短いほど金利は低くなりますが、固定期間終了後の金利変動幅に上限は設けられていないため、市場の金利の変動によっては毎月の返済額が大きく増加する可能性があります。
●全期間固定型
全期間固定型は、完済するまで金利が変わらない金利タイプです。市場の金利が上がった場合でも返済額が一定なため、返済計画が立てやすいといえるでしょう。一方で、一般的にほかの金利タイプよりも金利が高めに設定されており、市場の金利が下がった場合でも返済額が下がらないという点には注意しましょう。
ここでは1つの例として、3600万円を借り入れた際のシミュレーションを行ってみましょう。返済期間は35年で、それぞれの金利タイプの相場の金利を用いてシミュレーションを行っています。なお、固定期間型は、固定期間終了後に変動金利に切り替えることとします。
まずは、変動型の金利が6年目と11年目で1%ずつ上がると仮定した場合の返済額です。
金利タイプ | 変動型 | 10年固定期間型 | 全期間固定型 | |
---|---|---|---|---|
1年目~5年目 | 金利 | 0.5% | 0.9% | 1.3% |
毎月返済額 | 93,450円 | 99,953円 | 106,733円 | |
6年目~10年目 | 金利 | 1.5% | 0.9% | 1.3% |
毎月返済額 | 107,797円 | 99,953円 | 106,733円 | |
11年目~35年目 | 金利 | 2.5% | 2.5% | 1.3% |
毎月返済額 | 120,918円 | 120,422円 | 106,733円 | |
総支払額 | 48,350,030円 | 48,121,076円 | 44,827,911円 |
次に、変動型の金利が6年目と11年目で0.1%ずつ下がると仮定した場合の返済額です。
金利タイプ | 変動型 | 10年固定期間型 | 全期間固定型 | |
---|---|---|---|---|
1年目~5年目 | 金利 | 0.5% | 0.9% | 1.3% |
毎月返済額 | 93,450円 | 93,450円 | 106,733円 | |
6年目~10年目 | 金利 | 0.4% | 0.9% | 1.3% |
毎月返済額 | 92,087円 | 93,450円 | 106,733円 | |
11年目~35年目 | 金利 | 0.3% | 0.3% | 1.3% |
毎月返済額 | 90,956円 | 91,174円 | 106,733円 | |
総支払額 | 38,418,969円 | 38,566,249円 | 44,827,911円 |
表からも分かるように、金利タイプが変わると総支払額も大きく変わってきます。将来的に市場の金利がどのように変動するかは分かりませんが、変動型や固定期間型の返済額が変動するイメージをつかめると思います。
住宅ローンを組む際は、それぞれのメリットと注意点を理解したうえで、自分に合った金利タイプを選択しましょう。
返済額を決める際のポイントとは?
返済額を決める際はどういった点に注意するべきでしょうか?ここでは、返済額を決める際のポイントを3つご紹介します。
毎月の返済額を具体的にする
毎月の返済額を具体的に決めるために、支出の内訳を整理しましょう。支出と毎月の給料を照らし合わせることで、具体的な返済額をより決めやすくなります。
以下の表は、年収600万円で既婚で子どもが1人、配偶者は専業主婦(夫)というモデル家庭での、毎月の支出の例です。なお、年収600万円のときの手取り年収は470万円としており、支出額の内訳は、「理想の家計バランス」といわれる割合をもとに算出しています。
年収600万円(手取り年収470万円/手取り月収39万円) | ||
---|---|---|
食費 | 14% | 5.5万円 |
水道光熱費 | 6% | 2.3万円 |
通信費 | 5% | 2.0万円 |
小遣い | 10% | 3.9万円 |
教育費 | 10% | 3.9万円 |
保険料 | 6% | 2.3万円 |
趣味・娯楽費 | 2% | 0.8万円 |
被服費 | 3% | 1.2万円 |
交際費 | 2% | 0.8万円 |
日用雑貨 | 2% | 0.8万円 |
その他 | 3% | 1.2万円 |
残り | 14.3万円 |
表の通り、残りの金額は14.3万円となり、このなかから住宅ローンの返済と、貯蓄を行うことになります。支出の内訳は家庭によって異なりますが、おおよその返済額がイメージできると思います。
返済総額を把握する
返済額を決める際は、選択する金利プランに注意しましょう。変動金利を利用した場合、借り入れ開始当初の金利こそ低いものの、将来的な金利の上昇によって返済総額が増加する可能性もあります。そのため、変動金利を利用して住宅ローンを組む際は、金利が上昇した場合のシミュレーションを行ったうえで判断することをおすすめします。
また、自分に合った借入期間を設定するようにしましょう。借入期間が長ければ長いほど、年間の返済負担率は下がるので、それに伴って借入可能額が増えます。しかし借入期間が長い分、支払う利息も増えるので、結果的に返済総額も増えてしまう点に注意しましょう。
長期的なライフプランからイメージする
返済額を決める際は、現在のライフイベントだけでなく、今後発生しそうな出費も想定しましょう。
たとえば、子どもの成長に合わせて必要になる新入学の際にかかる費用が、おおよそどれくらいになるのかを出してみることも大切です。
また、購入したマイホームに長く住み続けるために、修繕費や住宅設備費などのメンテナンス費用も必要です。加えて急な病気やケガによる予期せぬ出費が発生することも考慮したうえで、毎月支払っていく金額を決定しましょう。
住宅ローンの負担を軽減するには?
住宅ローンを利用すると、購入する住宅や購入者自身の要件を満たす場合に「住宅ローン控除」を受けることができます。
住宅ローン控除は、住宅購入や増改築した人の金利負担を軽減するために導入された制度のことをいいます。内容としては、住宅の種類により受けられる控除額が異なるため、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
●住宅ローン控除に関する記事はこちら
住宅ローン控除の基礎知識や受けられる住宅の条件まで詳しく紹介しています。
無理のない生活を考慮した返済計画が鍵!
年収600万円でも、マイホームを購入することは可能です。しかし、購入した後に余裕のない生活になることは避けたいですよね。そうならないためにも、自分の長期的なライフプランを考慮したうえで、住宅ローンの借入額を設定するようにしましょう。住宅ローンは、安定した収入のある定年までに完済できるのが理想的といわれています。
限度額ギリギリで借り入れを行うこともできますが、今後生活をしていくうえで大きな負担となるということも考えたうえで、返済負担額や金利タイプを判断するようにしましょう。無理のない住宅ローンで理想のマイホームを手に入れてくださいね!
情報提供:税理士 宮原 裕徳
株式会社ラムチップ・パートナーズ代表取締役。税理士。LAMTIP PARTNERS(Thailand) Co., Ltd. CEO日本と東南アジアの不動産にかかわる会計・税務に詳しい。法人や個人向けに、無駄な税金を払わないための節税対策セミナーなども行う。