マンション購入ガイド
リバースモーゲージとは?老後の暮らしを安定させる資金調達方法を解説
定年退職し、今後、年金と貯蓄だけでやっていけるのか不安に思っています。家を持っている人なら「リバースモーゲージ」という制度で融資が受けられると聞いたのですが、どういうものでしょうか?高齢でも利用できますか?
リバースモーゲージはシニア世代向けの資金調達方法の1つです。今の住まいを担保にして融資してもらい、毎月利息のみを返済していく方法です。リバースモーゲージを利用した本人が死亡した後、対象の不動産を売却した資金を金融機関への元本返済にあてます。
情報提供:不動産コンサルタント 秋津 智幸
目次
シニア世代の資金繰りに役立つリバースモーゲージ
「年金だけで安心した生活を送れるだろうか…」
「退職した後でも必要なときにまとまった資金を調達できる方法はあるのだろうか…」
シニア世代の人のなかには、こうしたお金の不安や疑問を抱えている人が多いのではないでしょうか?
「リバースモーゲージ」は、そんなシニア世代のための資金調達の方法です。今回は、「リバースモーゲージ」について、詳しくご紹介していきます。
不動産を担保にお金を借り入れ、死亡後に返済する融資
リバースモーゲージとは、不動産を担保に資金を借り入れ、毎月利息分のみを返済し、元金は死亡後に返済する融資商品です。元金の返済は、相続人が別の資金で一括することもできますが、担保となっている不動産を処分して、そのお金で返済する方法が一般的です。また、借りる資金は、年金のように月々受け取ることも、一括で受け取ることもできます。
リバースモーゲージはシニアのための資金調達制度であるため、契約できる対象年齢に制限があります。対象年齢は、利用する金融機関によりますが、多くの場合55歳~84歳となっています。
利用者の死亡後に不動産を売却して返済することが多いため、リバースモーゲージは「資産を遺さなくてよい」と思っている人にとっては使いやすい資金調達方法です。
なお、借入本人に配偶者がいる場合、金融機関や商品によっては、本人の死亡後に配偶者へ権利を引き継ぎ、配偶者が同じ家に住み続けながら利息を返済していくことも可能です。配偶者へ権利を引き継ぐ場合は、契約時に配偶者を連帯債務者とする必要があります。
運営元は大きく分けて2つある
リバースモーゲージは、社会福祉協議会や自治体などの公的機関が行っているものと、金融機関が行っているものの2つがあります。
社会福祉協会や公的機関が行っているものは、低所得者向けに作られたサービスのため、利用者の収入や資金使途などに制限がある場合が多くなります。
金融機関が提供しているものは、民間の金融機関が独自で提供しているもののほか、住宅金融支援機構が提供している「リ・バース60」というものがあります。
民間の金融機関が独自で提供しているものには、用途に制限がないものが多いという特徴があります。資金の使い道は、生活費、医療や介護費、老人ホームの入居金、住宅ローンの返済、自宅のリフォームなどさまざまなものに使用できます。
金融機関によって内容は異なりますが、民間の金融機関の商品は、住宅支援機構のものに比べると、融資額(借入可能額)が高いことも特徴です。それだけに、毎月の返済は利息だけだとしても安定した収入と金融資産を持っていることが条件となる場合が多いようです。
一方、住宅金融支援機構が提供する「リ・バース60」の場合は、自身や家族の新たな住宅購入資金、リフォーム資金、住宅ローンの返済資金、老人ホームに入居するための一時金など、基本的に住宅用に用途が限られる特徴があります。なお、「リ・バース60」は提携する金融機関によって資金使途が異なることがありますので、注意が必要です。
リバースモーゲージのメリット
では、次に具体的にリバースモーゲージを利用する具体的なメリットを見ていきましょう。
まとまった資金が調達できる
一般的に、仕事を引退すると収入が減るため、金融機関からお金を借りることが難しくなります。しかし、リバースモーゲージは、シニア世代向けの資金調達方法であるため、仕事を引退した状態でも、お金が必要なときにまとまった融資が受けられることは、メリットといえるでしょう。
毎月の支払額が抑えられる
リバースモーゲージの場合、毎月の支払いは一般的に借りた資金の利息分だけです。元本と利息を毎月返済していく一般的なローンと異なり、リバースモーゲージは毎月の支払いを抑えることができるというメリットがあります。
また、住宅ローンが残っている場合でも、残債が少ないケースでは、リバースモーゲージを利用して残債分をリバースモーゲージの資金で返済し、結果的にリバースモーゲージに切り替えることが可能です。切り替えることで、通常の住宅ローンの支払いよりも毎月の支払い額が低くなることが多いため、収入が少なくなるシニア世代には有効な方法だといえるでしょう。
自分の家に住み続けられる
リバースモーゲージは、自分の住まいを担保にして融資という形で資金を調達するため、売却と違って自分の家に住み続けることができます。住み慣れた住まいから引っ越すことなく、そのまま生活できるという点も、大きなメリットです。
元金の返済方法を選べる
リバースモーゲージの元金の返済は、利用者本人(商品によっては配偶者も含む)の死亡後に返済することになります。相続人の判断で、担保となっている不動産を売却した資金で返済することもできますが、別の資金で一括返済することもできます。また、利用者本人が存命中に繰り上げ返済することもできます。
このように元金の返済が猶予され、返済方法が選べるのもリバースモーゲージのメリットになります。
リバースモーゲージの注意点
ここまではリバースモーゲージを利用するメリットをお伝えしてきましたが、リバースモーゲージにはいくつか注意したい点もあります。
限度額を超えたり、契約満了期間が来てしまう可能性もある
年金形式のように分割で資金を借り入れる場合、寿命が長くなると、契約の限度額(極度額)まで借り入れをしてしまい、それ以上借り入れができなくなってしまう可能性があります。また、金融機関によっては契約で返済に期限を設けているところもあります。そのため、契約期間が来た場合、その時点で一括返済を要求される場合もあります。その場合、返済資金が準備できなければ、自宅を売却することが必要になってしまいますから注意しましょう。
不動産評価額が変動する可能性がある
契約期間中(利用中)に、不動産の相場価格が下がってしまうと、対象となっている不動産の評価額が下がり、融資限度額の見直しが行われることもあります。見直しの結果、融資の限度額以上を利用していた場合は、差額を返済する必要が生じてしまうこともあります。存命中に不動産の評価額が変動する可能性があることは覚えておきましょう。
金利が変動する可能性がある
金利についても注意しておきたい点があります。リバースモーゲージは固定金利ではなく、多くの場合、定期的に金利を見直す変動金利が採用されています。そのため、急激な金利上昇があると、利息の支払い額が高くなる場合もあります。
利用条件が厳しい場合がある
利用条件にも注意が必要です。利用者の死亡後、不動産の売却によって元金の返済を想定しているために、相続人となる人の同意を求めることが利用の条件となっています。そのため、自宅に配偶者以外の同居人がいたり、法定相続人の同意がなかったりする場合は利用できない場合があります。
さらに、商品によっては、マンションは対象外になっていたり、対象地域が都市部のみであったりと、リバースモーゲージを利用するには、さまざまな条件を満たしている必要があります。
ほかにもある!シニアが資金を調達する方法
ここまで紹介してきたように、リバースモーゲージには、不動産の担保価値、利用者本人の収入、年齢、相続人の同意などのさまざまな条件があります。資金を調達したくても、必要な条件がクリアできない場合はどうしたらよいのでしょうか?
老後の生活費やまとまった資金を得る方法の1つに「リースバック」という方法もあります。リースバックは、自宅を売却して資金を調達したうえで、買主から建物を借りて賃料を支払いながら、そのまま自宅に住み続ける方法です。「融資」であるリバースモーゲージと比較すると、リースバックは「売却」であるため、利用条件のハードルは下がります。
リースバックを利用することで、生活費を補ったり、まとまったお金を捻出したりすることができます。自宅を売却しても引っ越す必要がないため、売却したことを周りの人に知られる心配もありません。また、契約条件などによっては、住まいを買い戻すことも可能です。
利用のハードルは低いといっても、リースバックにもいくつか利用条件があるので、事前に確認しておきましょう。
リバースモーゲージが自分に合った方法か見定めてから利用を!
シニア世代が利用できる資金調達方法のひとつであるリバースモーゲージについて、ここまでお伝えしてきました。
持ち家ではあるものの、「年金と貯金だけで、これからの暮らしが不安」という方は、リバースモーゲージを資金調達の方法のひとつとして検討してみてもいいかもしれません。ただし、リバースモーゲージが自分に合った方法かをしっかり確認してから利用することをおすすめします。
リバースモーゲージやリースバック以外にも、今の自宅を売却した資金で、都心のコンパクトな住宅や郊外の住宅など、これからの生活に見合った家に住み替えるという方法もありますよ!
自分にはどの方法が合っているのか知りたい場合は、ファイナンシャルプランナーや不動産会社に相談するのもよいでしょう。
情報提供:不動産コンサルタント 秋津 智幸
不動産サポートオフィス
代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。不動産コンサルタントとして、物件の選び方から資金のことまで、住宅購入に関するコンサルティングを行なう。
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