マンション購入ガイド
リースバックとは?仕組みとメリット・注意点をご紹介!
まとまったお金が必要になったのですが、持ち家を使って資金調達ができる「リースバック」という方法があると小耳に挟みました。リースバックとはどういう制度なのですか?

「リースバック」は、持ち家を活用した資金調達の1つです。売却した持ち家に家賃を支払うことで賃貸物件として住み続けられる仕組みですよ。リースバックのことをよく知り、自分の状況に合っているかどうか、検討してみるのはよいかもしれません。
情報提供:不動産コンサルタント 秋津 智幸
目次
持ち家を活用して資金を調達する「リースバック」
まとまった資金が欲しいけれど、今の家には住み続けたいから売却は抵抗がある・・・そんな人におすすめの方法のひとつが「リースバック」です。リースバックとは持ち家を活用した資金調達方法の1つ。自宅を売却して資金を調達し、売却した自宅に賃貸借契約で住み続けるという仕組みになります。この場合の自宅の買主は主に金融機関や不動産会社です。

リースバックでは、家を売却しても買主と賃貸借契約を結ぶことで、それまでの持ち家に住み続けられることになります。一方で、賃貸として借りることになるので家賃を毎月支払う必要があります。またリースバックは資金使途、お金の使い道についての制限がないことが特徴です。
今回は、そんな「リースバック」を利用するメリットや注意点について詳しくお伝えします。
リースバックのメリット6つ
リースバックで資金調達した場合のメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?見ていきましょう。

まとまった資金が早く手に入る
「リースバック」という方法で資金調達すると、家を売却したことで、まとまった資金が手に入ります。また、個人ではなく、金融機関や専門業者が買い取るために、通常の売却に比べて、売却までの期間が短くなります。一般的な仲介で家を売却する場合は、買主を探すことから始めなければなりません。その分、リースバックでは家の売却金額が早く手に入れられるというわけです。
その特徴を生かして、リースバックは住宅ローンの支払いが滞った際に、ローンの残債が売却価格を上回るケースで、検討・活用されることが多いようです。なかには、任意売却と併せて利用されることもあります。
今の家にそのまま住み続けられる
リースバックでは今住んでいる家を売却した後に、買主と賃貸借契約を取り交わしてそのまま住み続けることができます。そのため、新しい家を探したり、引っ越したりする必要はありません。家を売却しても新居を探す手間が省けるのは、大きなメリットとなりますね。

維持費が不要になる
リースバックでは自宅を売却するため、家を所有していると支払わなければならない経費が、かからなくなります。固定資産税や都市計画税、マンションの場合は、管理費や修繕積立金も支払いが不要となるのです。
周囲に売却したことが知られない
リースバックでは売却の事実を周囲に知られることがありません。「家を売る」ということが周囲に知れると、売る理由を聞かれたり、なにかと噂が立ったりする場合もあります。一般的な売却のほか、返済ができずに競売となった場合でも買主を探すために物件情報を公表しなければなりません。
そのため、ときには売却していること周囲に知られてしまうことがありますが、リースバックでは直接買主と交渉し、売却前に買主が決まっているために売却の事実を周囲に知られずに済みますよ。
将来買い戻すことができるものもある
リースバックでは、売買契約時に「買い戻し」の特約を付けることができる場合もあります。買い戻しの特約を付けられた場合は、たとえ一度売却しても、所定の期間内に金銭的に余裕ができたらその家を再び購入することが可能になります。いつか買い戻したい希望がある場合は、買戻し特約が付けられる買主やプランを選ぶのがポイントですよ。
相続トラブルの予防になる
家を売却すると、当然、相続する不動産はなくなります。相続の際、不動産はそのままでは相続人に分配しづらく、相続者間での合意が得られにくいこともあります。あらかじめ不動産を現金にしておくと、ゆくゆくの相続トラブルを避けられるかもしれません。
一方で、相続財産がなくなることになるので、事前に相続人の承諾が必要になることがあります。

リースバックの注意点6つ
リースバックにはいろいろなメリットもありますが、同時に注意点もありますよ。ここではリースバックの注意点をお伝えします。
毎月家賃の支払いが発生する
リースバックでは持ち家を売却した後、その家に引き続き住むために買主と賃貸借契約を結びます。従って、毎月の家賃を支払わなければなりません。また、ケースにもよりますが、家賃が高額になり、月々の負担額が増える可能性があります。その理由は、家賃は売却価格に応じて決まり、一般の相場に照らして家賃を決めるわけではないため、家賃が相場よりも高くなるかもしれないからです。
所有権がなくなる
リースバックでは持ち家を売却するため、それに伴い所有権は移転し、自分は家の所有者から賃借人となります。そうなると、新しい所有者の管理条件に従わなければなりません。ペットの飼育やリフォームなど、これまでは自分たちで自由に行えていたことが、できなくなる可能性があります。
売却資金でローンを完済できないと審査が通らないことがある
持ち家に住宅ローンの残債があった場合、審査が通らず、リースバックが利用できないことがあります。リースバックを活用して得た売却資金では住宅ローンが完済できないほど、ローンの残債があると、売却しても住宅ローンの抵当権が消せないため、買主へきちんと引渡しができません。そのため、買い取る側の審査で落ちてしまいます。
仮に、任意売却のケースで、残債が残っていても抵当権を外してくれるという場合でも、住宅ローンの支払いと毎月の家賃の両方を払う支出が、収入に対して比重が高すぎると、家賃を滞納するリスクがあるとみなされてしまうのです。自分の場合はリースバックを活用できるのか、事前にローンの残債と売却価格を比較検討する必要がありますよ。

売却額が相場よりも低い可能性がある
リースバックを活用して持ち家を売却すると、周辺の相場よりも売却価格が低くなるのが一般的です。リースバックでの売却価格は相場の6~9割の価格になるケースが多いようです。買主である金融機関や不動産会社は、いずれ売却をすることを見越して購入をするため、売却にかかる費用や一定の収益を見越して価格設定をするからです。
ずっと住み続けられないことがある
リースバックでは持ち家を売却した後、その家に住み続けるために買主と建物の賃貸借契約を締結します。その際、契約は定期借家契約となることが一般的です。定期借家契約とは、あらかじめ賃貸期間が決まっている賃貸契約のこと。契約の更新が前提となる一般的な普通借家契約とは違い、定期借家契約は更新が前提ではありません。
リースバックによって定期借家契約で賃借した物件に住み続けるには、定期借家契約において定められた期日が到来した際には改めて再契約しなければならないのです。定期借家契約の期間はおおむね半年から2年になる場合が多く、家賃の支払いで滞納があると途中解約となってしまうばかりでなく、その後の再契約を断られたり、改めて敷金や礼金、仲介手数料を要求される場合もあります。
買い戻すときに、売却金額よりも高い場合がある
リースバックでは、家を売却する際の価格が一般的な相場の6~9割ともいわれる一方で、買い戻しの特約がある場合に、家を買い戻す際の金額は売却価格の1~3割上乗せされてることが多くなります。それはリースバックを事業とする金融機関や不動産会社の経費や利益が加えられるためです。

リバースモーゲージとの違いは?
今の家に住み続けたまま、自宅を活用して資金調達の方法には、リースバック以外に「リバースモーゲージ」というのもあります。
リバースモーゲージは、基本的にシニア向けの融資で、自宅不動産を担保に資金を借り入れします。毎月の返済は借入金の利息のみとなり、借入金の元本は債務者の死亡後に担保としていた不動産を売却するか、別途資金を充てるなどほかの方法で返済します。
●リバースモーゲージに関する記事はこちら

持ち家を利用して融資を受ける「リバースモーゲージ 」についてご紹介します。

リバースモーゲージは、自宅を活用した資金調達という点ではリースバックと同じです。両者の違いは、リースバックが「家の売却」であるのに対して、リバースモーゲージは「家が担保の融資」であることです。そのため調達した資金の利用条件に違いが出てきます。
資金の利用条件では、リースバックは資金の用途が自由であるのに対して、リバースモーゲージは資金の用途に制限があることがあります。融資であるリバースモーゲージでは、金融機関や商品によって、融資資金の使い方に制限を設けることができます。
基本的には、元々、生活を支援をするという目的がある融資なので、お金の使い道は、生活資金や医療・介護などに限られる商品もあります。
リースバックとリバースモーゲージの違いを以下の表にまとめました。
条件 | リースバック | リバースモーゲージ |
---|---|---|
年齢 | 年齢制限なし | シニア向けで年齢や収入などの条件あり |
資金調達の早さ | 売却でき次第受け取れる。資金の受け取りまでは最短で5日、最長で50日というプランがある | 融資の審査があるため相談・受付からだいだい1~2か月 |
資金の受け取り方法 | 売却のため、一括で受け取り | 一括で受け取る方法と年金のように定期的に受け取る方法がある |
家の所有権の有無 | 無 | 有 |
資金の用途 | 自由 | 原則は生活資金や医療・介護資金など 用途は自由なものもある |
対象不動産 | 一戸建てや住宅、マンション、店舗、工場などさまざまな不動産 | 一戸建てやマンションなどの住宅 |
買い戻しの可否 | 可 | - |
自分に合った資金調達の方法を見つけよう
今回は、持ち家を活用した資金調達の方法として、リースバックのメリットや注意点について詳しくお伝えしました。また、持ち家を売らずに資金を調達する方法としてリバースモーゲージも併せてご紹介しました。
家を活用した資金調達の方法として、リースバックとリバースモーゲージ、それぞれ特徴があるので、どちらが自分の状況に合っているか、しっかり検討してくださいね。
さらに、持ち家を利用した資金調達の最も単純な方法としては、家の売却という方法もあります。たとえば、広い一戸建て住宅を売却して、少しサイズの小さな価格の安いマンションへ引っ越したり、都心の家を売却して郊外に移り住んだりすることで、今の家にかかるコストを下げて、毎月の必要資金を捻出(調達)することも可能です。
いずれの方法も、特徴があり、利用条件も異なるので、よく比較・検討して、自分の状況に合った資金調達方法を見つけてくださいね。

情報提供:不動産コンサルタント 秋津 智幸
不動産サポートオフィス
代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。不動産コンサルタントとして、物件の選び方から資金のことまで、住宅購入に関するコンサルティングを行なう。
HP:http://2103-support.jp/?page_id=14