マンション購入ガイド
マンション管理組合って?役員は何をするの?
新しく分譲マンションを購入したのですが、早速ポストに「総会のお知らせ」が入っていました。これは絶対に出なくてはならないものなのでしょうか?普段仕事で忙しいし、管理はお任せできればと思うのですが…。
総会とは、管理組合で年1回以上行われるマンション管理の定例報告会です。分譲マンションを購入すると、自動的に管理組合の構成員となり、管理組合ではマンションの維持管理を目的として理事会の運営や共用部分の保全などを行なっています。住んでいるマンションの状況を確認するためにも、前向きに参加していくようにしましょう。
情報提供:不動産鑑定士 竹内 英二
目次
マンション管理組合の目的や役割とは?
分譲マンションを購入したばかりの人であれば、知りたいことや分からないことが多いはずですよね。また、これからマンションを購入しようと思っている人にとっても、事前に把握しておくべきことがいくつかあります。マンションの管理組合も、その1つです。「管理組合とはどんなことをしているの?」「自分も何かやらなくてはいけないことがあるの?」と思っている人もいるのではないでしょうか?
そこで今回は、マンションを購入した、もしくは将来的に購入予定のある人に向けて、マンションの管理組合についてご紹介します。
まずは、マンションの管理組合とはどんな目的や役割があるのかを、具体的に見ていきましょう。
資産価値維持や良好な住環境の確保が目的
分譲マンションの所有者(区分所有者)は、そのマンションの土地・建物・設備全体について、区分所有者全員で構成される「管理組合」を作って維持管理をしていく必要があります。管理組合はマンションの資産価値維持や、良好な住環境の確保を目的として結成され、分譲マンションを購入したら、自動的に管理組合の構成員となります。
マンションの資産価値を維持し、安心して暮らすためには、管理組合の健全な活動が不可欠です。そのためマンションの所有者は「管理組合なんて面倒、トラブルさえなければ関係ない」と思わず、「自分のこと」として捉えるようにしましょう。
マンションの重要事項を決定する役割を持つ
管理組合の重要な役割として、マンションの維持管理があります。共用部分の清掃業務をはじめ、日々の設備のメンテナンス、予算の決定・執行・管理・報告などを行い、必要に応じて管理規約の改正や大規模修繕計画といった重大事項に至るまで、マンションの所有者の意見をまとめ、維持管理に関する意思決定をする役割を担っています。
管理組合の業務
それでは、実際に行われる管理組合の業務にはどのようなものがあるのでしょうか?
国土交通省が作成した「マンション標準管理規約」※1によると、管理組合は以下の業務を行います。なお、「マンション標準管理規約」とは、分譲マンションのような区分所有建物における管理規約について、一定のガイドラインを示すために作成されており、これらの規約の遵守を強制するものではありません。
●建物や敷地の管理
・管理組合が管理する敷地及び共用部分等の保安、保全、保守、清掃、消毒及びごみ処理
・区分所有者が管理する専用使用部分について管理組合が行うことが適当であると認められる管理行為
・マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務
・その他建物並びにその敷地及び附属施設の管理に関する業務
・敷地及び共用部分等の変更及び運営
・組合管理部分の修繕
●お金の管理
・修繕積立金の運用
・管理組合の消滅時における残余財産の清算
●情報の管理
・宅地建物取引業者から交付を受けた設計図書の管理
・長期修繕計画の作成又は変更に関する業務及び長期修繕計画書の管理
・修繕等の履歴情報の整理及び管理等
●その他
・建替え等に係る合意形成に必要となる事項の調査に関する業務
・共用部分等に係る火災保険、地震保険その他の損害保険に関する業務
・官公署、町内会等との渉外業務
・広報及び連絡業務
管理組合を運営し業務を執行する理事会役員
マンションの区分所有者全員で作る組織が管理組合だとすると、その管理組合を運営する業務の執行機関が「理事会」となります。理事会は複数の役員から構成されていますが、役員はどのように決まり、もし役員になった場合はどんなことをするのでしょうか?
理事会の役員はどうやって決まるの?
マンションの理事会は、区分所有者のなかから選ばれた代表者によって構成されたグループです。
それぞれ管理組合により理事会役員の選出方法は違いますが、一般的に立候補もしくは抽選や推薦、または輪番制で決められます。
役員に選ばれると、管理組合によりますが、1か月~数か月に一度のペースで理事会を開催し、マンションにかかわる進行中の問題や将来の諸問題を話し合ったり、管理組合からの報告を受けたりします。
一般的な任期は1~2年とされていますが、マンションの管理規約により規定が異なるので、住んでいるマンションの管理規約を一度確認してみることをおすすめします。
ちなみに、理事会役員は一般的に無償とされています。ただし、役員の選出が難しいマンションでは、管理規約に報酬規程があり、それに準ずる形で報酬が発生する場合もあります。
役職ごとの役割とは
理事会の役員には、理事長、副理事長、理事、会計担当理事、監事などがあります。それぞれどのような役割があるのかを見ていきましょう。
役職名 | 主な業務 |
---|---|
理事長 |
・管理組合を代表し、その業務を統括する。 ・規約、使用細則等又は総会若しくは理事会の決議により、理事長の職務として定められた事項を行う。 ・理事会の承認を得て、職員を採用し、又は解雇する。 ・通常総会において、組合員に対し、前会計年度における管理組合の業務の執行に関する報告をする。 ・職務の執行の状況を理事会に報告する。 |
副理事長 | ・理事長を補佐し、不在時はその職務を代理する。 |
理事 |
・理事会を構成し、理事会の定めるところに従い、管理組合の業務を担当する。 ・管理組合に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、当該事実を監事に報告する。 |
会計担当理事 | ・管理費等の収納、保管、運用、支出等の会計業務を行う。 |
監事 |
・管理組合の業務の執行および財産の状況を監査し、その結果を総会に報告する。 ・管理組合の業務の執行および財産状況について不正・不当な事実があると認めるときは、臨時総会を招集する。 ・いつでも、理事に対して業務の報告を求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることができる。 |
参考:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001417732.pdf
なお、役員に抽選や輪番制で選任された場合には辞退できますが、管理組合を公平・公正に運営するためにも、やむを得ない理由がない限りは辞退しないほうがよいでしょう。
●マンションの理事長に関する記事はこちら
マンションの理事長になった際に行う取り組みについてご紹介しています。
理事会では何が行われているの?
マンションの理事会ではマンション全体のさまざまな情報共有やトラブルなどの懸案事項のほか、清掃、点検、管理費・修繕積立金の管理、メンテナンスの実施などについての検討を行います。
マンション管理の定例報告を行う総会
管理組合の運営している総会は、少なくとも年に1回以上開催される集会で、建物や敷地、設備の管理について話し合いを行います。
原則的に、理事長が招集し、管理組合の決算や活動報告、予算審議、役員選任などを行います。その際、建て替え決議のような重要議案では、各マンションの管理規約に則り、一定以上の議決権数や組合員数の出席が必要となります。
年間の流れとしては、年に一度の「通常総会」で、その年度の活動内容や決算の報告、来年度の予算審議や次期理事会役員の選任などを行い、細かい計画はその後の理事会で検討していく形式が一般的です。ただし、災害や設備の故障などの予期せぬ事態が起こり、理事長が必要だと判断した場合には、理事会の決議を経て「臨時総会」の招集が行われます。
住みよいマンションにするためにも、総会の場では活発で前向きな話し合いをするようにしましょう。
マンション管理で注意するべきトラブル
管理組合を運営するうえで発生するトラブルがあります。ここからは、そのトラブルについて見ていきましょう。ここでは、管理組合内でのトラブル、居住者同士のトラブル、建物設備のトラブルの3つについてご紹介します。
管理組合内でのトラブル
マンションの管理維持を担っている管理組合ですが、なかには役員に選任されたのに、その役割を果たさない住民が出てくる場合があるでしょう。たとえば、理事会や総会に度々欠席したり、決められた業務を行わなかったりすることが挙げられます。その場合は、組合員であるマンションの区分所有者は、その役員を解任することができます。
また、役員同士の仲が悪いというケースもあります。マンション管理で発生するトラブルを解決するために会議を行っていくのが、管理組合の役割です。しかし、役員同士が良好な関係を築けずに、運営をスムーズに進めることができない場合は、当事者のどちらかまたは両方を解任することも方法の1つといえるでしょう。
居住者同士のトラブル
居住者同士のトラブルを解決するのも、マンション管理組合の役割の1つです。代表的な例としては、ペット飼育トラブルや騒音トラブルがあります。また、違法駐車や違法駐輪も居住者同士のトラブルの原因となりやすいとされています。
当事者と管理組合で解決できない場合は、管理会社に仲介役をお願いして解決するのもよいでしょう。
建物設備のトラブル
建物設備の不具合によって起きるトラブルもあります。なかでも、よく見られるケースとして、設備の不具合で起きる水漏れがあります。水漏れの修繕工事のために、専有部分への立ち入りが必要な場合は、区分所有者へ説明を行う必要があります。区分所有者に専有部分の立ち入りを承諾してもらえない場合、修繕工事が予定通りに進まない可能性もあるでしょう。
このようなケースでは、原因が建物設備自体にあるのか、居住者の過失によるものかによって対処法が変わってきます。
管理組合と管理会社の違いは?
マンションの管理組合の区分所有者全員で構成された団体であるのに対し、管理会社は、マンションの維持管理を行う業者を指します。
マンションの管理組合も、マンションの維持管理を行う目的で結成されていますが、全ての管理業務を行うとかなりの労力と時間が必要になります。当然、区分所有者には各個人の生活があるため、マンション管理に関する作業などを公平、公正に分担するのは難しいでしょう。
そのため管理組合が、管理業務の一部または全部を管理会社に委託し、運営の円滑化を図っていることが一般的です。
マンションの場合、管理組合から管理会社へ業務の全てを委託するケースが多い傾向にありますが、管理費削減の理由から保守・点検や受付・清掃のような、専門性の高い業務のみを管理会社に委託しているケースもあります。
管理会社に委託できる業務としては、以下が挙げられます。
[ 1 ] 事務管理業務
マンションの管理費や修繕積立金などの収納や出納に加え、決算書や予算案などの作成を行います。
[ 2 ] 清掃業務
清掃業務は「日常清掃」と「定期清掃」の2つがあります。日常清掃は、日常的に行えるエントランスや廊下、階段を拭いたり、掃いたりする掃除を指します。これに対して、定期清掃は、専用の機械を使用した共用部の清掃です。
[ 3 ] 管理員業務
訪問者の受付や対応を行います。必要によっては、マンション内の巡回や、引越しの立ち会いも行います。
[ 4 ] 建物・設備管理業務
エレベーターや消防設備、給水設備などの共用部分の設備の保守点検や法定点検を行います。
管理組合を正しく理解して、住みやすい環境を手に入れよう
マンションの質は理事会が大きく左右するといってもよいでしょう。管理会社はそのマンションを主体的に管理しているわけではなく、あくまで管理組合から委託を受け、管理業務の作業や管理に関する提案やアドバイスを行っています。そのため、具体的な指示を出している理事会は、区分所有者をはじめとする居住者にとって、その住み心地やマンションの質そのもの、ひいては資産価値に影響を与える非常に重要な存在となります。
つまり、理事会が適切に機能しているか、有意義な活動をしているかがマンションの将来を左右するともいえます。理事会が活性化することにより、マンションの資産価値を将来長きにわたり維持していくことや、日々の暮らしをより快適なものにすることが可能となるでしょう。
たとえば、理事会の働きによって管理会社を変更することで、管理費用の大幅な削減につながり、管理費が下がるといったこともあります。また、理事会と管理会社がよい関係を築くことで、修繕箇所の安価で効果的な改善策や、実効性のある災害関連の対策などといった、よりよい提案がなされるかもしれません。
住みよいマンションにするためには、自分も管理組合の一員だということを忘れないことが大切です。日頃から他人事だとは思わずに、管理組合の活動を定期的にチェックするようにしましょう!
※1出典:マンション標準管理規約,国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/000161664.pdf
最終確認(2022年4月19日)
情報提供:不動産鑑定士 竹内 英二
株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、不動産キャリアパーソン、中小企業診断士。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングを行う。
HP:https://grow-profit.net/