マンション購入ガイド
定期借地権付きマンションとは?メリットと覚えておきたい注意点
マンション購入を検討していて、物件情報のところに「定期借地権」という言葉を見かけました。どういうものなのでしょうか?
敷地の権利が所有権の分譲マンションとは違い、マンションの建物は所有するものの、敷地は借りる形(借地)となる定期借地権付きマンション。物件価格が安い、土地の固定資産税がかからないなどのメリットがある一方で、購入前には覚えておくべきことも。
情報提供:不動産コンサルタント 秋津 智幸
目次
定期借地権付きってなに?普通のマンションとどう違うの?
マンションを探していて、相場よりも価格の安い物件を見つけることってありませんか?実はそれ、「定期借地権」付きのマンションかもしれません。物件広告でも目にすることがある「借地権付き」の文字。そもそも借地権とは、どういうものなのでしょうか?定期借地権付きマンションのメリットや注意点を解説していきます。
借地権とは、土地を借りる権利のこと
簡単にいうと借地権とは、土地を借りる権利のことを指します。住宅を購入する場合は通常、土地と建物、それぞれの所有権を購入することをイメージしますが、借地権付きのマンションでは、所有権としては建物だけを購入し、土地自体は借りる(厳密にいうと、土地を借りる権利(借地権)を買う)という形態になります。
借地権には大きく分けると「旧法借地権」「普通借地権」「定期借地権」という3つの種類があります。
「旧法借地権」は旧借地法で定められていた借地権で、よほどのことがなければ、更新することができ、半永久的に土地を借り続けることができる借地権です。
「普通借地権」は旧法借地権と同じく更新することでほぼ半永久的に土地を借りることができますが、存続(更新)期間が旧法借地権よりも短くなっています。(旧法借地権では建物の構造による存続期間の違いがあったのですが、普通借地権ではその差はなくなりました。)
「定期借地権」は新法で新しい借地権として登場しました。定期借地権では、定められた一定期間(定期)の借地契約で、契約更新がありません。
一部の古いマンションでは、土地の権利が旧法借地の借地権であるものがまれに見受けられますが、新築あるいは比較的築年数の浅いマンションにおいては、契約更新のない「定期借地権」が用いられています。
また、定期借地権は、一般定期借地権と事業用借地権の2つがあります。通常、定期借地権付きマンションでは、借地権について一般定期借地権が採用されています。一般定期借地権は、契約期間は50年以上と定められています。つまり新築の定期借地権付きマンションを購入し、継続して住む場合、最低でも50年はそこに住み続けることができます。
普通のマンションとの違いは「値段」と「期限」
一般的な土地と建物どちらも所有権を購入するマンションと違うポイントは、物件価格です。土地の所有権を購入せず借りる形式(借地権)になる分、土地の価格が下がり一般的なマンションに比べ物件価格を抑えることができるといわれています。
物件価格以外の違いは、住み続けられる期限があるということ。ご紹介したように定期借地権付きマンションでは、決められた50年以上の一定の期間の満了期日が到来しても、原則として次の借地契約の更新は行われません。したがって、借地期限を迎えると、原則としてそこに建てられたマンションは建物を取り壊して更地に戻すことになります。
定期借地権付きマンションのメリットは?
定期借地権付きのマンションを購入するときのメリットには、どんなものがあるのでしょうか?主なポイントをご紹介していきます。
物件価格が通常と比べると安い
前述のように定期借地権付きマンションのメリットは、物件価格の安さといえます。ご紹介したように、ほぼ同じ立地、同じ間取りの物件であれば、通常のマンションと比べて物件価格を抑えることができます。さらに固定資産税といった土地にかかる税金を支払う必要がないため、立地などの条件によっては普通のマンションよりも申し込みの倍率が高くなることもあります。
たとえば、都心の一等地では、定期借地権付きマンションだからこそ手の届く価格になっているようなマンションは人気が高くなります。
マンションが建ちにくい好立地にあることも
当然ながらマンションを建てる場合、ある程度の規模(広さ)の土地が必要になります。ところが、元々その場所の土地を所有しているオーナーがさまざまな理由で売りたくないと考えていれば、その土地に一般的な土地の権利が所有権となるマンションは、土地を取得できないため、建てることができません。
しかし、一般定期借地権の場合、50年以上と期間は長くなりますが、将来、土地は確実に返ってきますので、土地を売りたくない、あるいは普通借地権のように半永久的に土地を利用する権利が返ってこない可能性があるのは困るといったオーナーでも土地を提供することを了承しやすくなります。
こうして土地の所有者が定期借地権だからこそ土地を提供し、マンションが建つことになり、その場所がマンションの立地として非常に魅力的であることもよくあります。
固定資産税や都市計画税が抑えられる
定期借地権付きマンションでは、土地を借りていることになるので、物件を所有している際にかかる固定資産税や都市計画税を抑えることができます。
土地と建物、それぞれにかかる固定資産税について、借地権付きマンションでは、土地にかかる固定資産税を支払う必要がありません。(土地の固定資産税は土地の所有者が支払います。)加えて、同じく都市計画区域内の土地に課税される都市計画税も土地の所有者に課税されるため、借地権付きマンションの所有者は土地の都市計画税についても課税されることはありません。毎年の土地にかかる税金が抑えられるのも、借地権付きマンションのメリットの1つです。
定期借地権付きマンションを購入する前に知っておくべきことは?
定期借地権付きマンションにはメリットがある一方、検討材料として知っておくべきこともいくつかあります。順番にご紹介していきましょう。
期限があるので、計画的な居住が必要
一般定期借地権では、借地期間は50年以上と定められており、一見すると遠い将来のことのように思えますが、たとえば自分の子どもの世代などが引き継ぎ、継続して住むケースでは、50年以上の居住が考えられます。そういった場合、50年以上先のこともある程度考慮して、あらかじめ居住の計画を立てておく必要があります。
また、借地期間の残存期間が短くなってきた場合、中古マンションとして売却する際、一般的なマンションに比べてやや売却しにくくなるという点も知っておきたいポイントです。
なお、現状では借地期限が到来したマンションの例がありません。今後、実際に取り壊しが必要になった際にどのような問題が発生するのかが見えにくいという背景もあります。購入を検討する際は、あらかじめ居住に期限があることを認識しておきましょう。
固定資産税の代わりに他の費用がかかる
定期借地権付きマンションでは、土地にかかる固定資産税や都市計画税を払う必要がない代わりに、マンション購入時(土地を借りる時)には一時金として、土地の保証金や権利金がかかります。また、入居後は毎月土地の所有者に払う地代も発生します。地代は立地や規模によって異なりますが、数万円程度が相場といわれています。
なお、建物に対する固定資産税や都市計画税は必要なため覚えておきましょう。また、通常のマンションの居住にかかる修繕積立金のほか、借地権付きマンションではさらに、取り壊しのための解体積立金も別途必要になってきます。このように、土地の固定資産税や都市計画税の負担こそ抑えられるものの、借地権付きマンションは購入時と居住中に必要となるほかの費用について事前に確認しておきましょう。
マンション購入の広がる選択肢
定期借地権付きマンションについてのメリットと、購入前に知っておくべきことを、それぞれご紹介してきました。定期借地権について、ある程度その内容を知っておけば、実際にマンションの物件概要を見たときも、どういったマンションなのか意味がすぐ理解できるようになりますね。
定められた借地期間があるため居住期間も決められているというのが、定期借地権付きマンションの最たる特徴といえます。
比較的少ない予算を前提にマンションを購入したい方や、より立地のよいマンションを購入したい方にとっては、メリットの大きいマンションといえるでしょう。後悔のないマンション購入を叶えるためにも、自分のライフプランを加味しながら、内容を知ったうえで購入を検討してみてください。
情報提供:不動産コンサルタント 秋津 智幸
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。不動産コンサルタントとして、物件の選び方から資金のことまで、住宅購入に関するコンサルティングを行なう。