マンション購入ガイド
マンションの寿命は何年?長く住める物件を選ぶポイントを解説
マンションの購入を検討中ですが、マンションは通常どのくらい長い間住めるものなのでしょうか?マンションの寿命が気になります。また、長く住めるマンションを選ぶコツはありますか?
マンションの寿命は、条件次第では100年以上といえます。マンションの構造や管理体制、立地に見合ったメンテナンスがされているかを確認することで、長く品質を維持できるマンションを見付けることができます。
情報提供:不動産鑑定士 竹内 英二
目次
マンションの寿命とは?
分譲マンションの購入は、そう何度も経験しない大きな買い物です。気に入って購入したマンションにはできるだけ長く住み続けたいと思う人も多いのではないでしょうか?特に中古マンションを検討している人は、「購入してすぐにマンションの寿命が来てしまったらどうしよう」と考えているかもしれません。
そこで今回は、新築および中古マンションの購入を検討している人に向けて、マンションの一般的な寿命や、寿命の長いマンションを選ぶポイントについてご紹介します。
メンテナンスされれば100年以上
マンションは、メンテナンスが行き届いていれば100年以上建物を維持することが可能です。国土交通省の資料※1によると鉄筋コンクリートで造られた建物(RC造)の平均寿命は68年ですが、最長の寿命は120年程度で、外装仕上げによってさらに150年程度に延命されると報告されています。
ちなみに、ここでいう年数は、鉄筋を被覆するコンクリートが中性化する速度から算定し、中性化が終わったときの効用持続年数のことを指します。
マンションの寿命が長くなるかどうかは、適正なメンテナンスが定期的に施されているかどうかによります。修繕のための費用がかかるものの、外装塗装や外壁タイル、共用部分の補修、屋上の防水処置、配管などを定期的に管理・修繕することで、より長く住んでいくことができます。最近の鉄筋コンクリート造のマンションは、適正なメンテナンスが定期的に行われていれば100年ほどは維持できるのです。
法定耐用年数ではない
マンションの寿命の話をする際によく出てくる言葉として「法定耐用年数」がありますが、これはマンションの寿命とは異なります。法定耐用年数は、会計上の建物の資産価値がゼロになるまでの年数を表しています。国税庁が税金を計算するために設定したもので、税金を求める際に使用する、減価償却が計上できる期間のことなのです。
ちなみに、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の一般的なマンションの法定耐用年数は、国税庁によって47年と定められています。この数値は、あくまでも会計上で資産価値がなくなるまでの年数を表しているため、鉄筋コンクリート造のマンションが47年で住めなくなってしまうわけではないことは前述の通りです。
そのため、マンション購入の目的が不動産投資ではなく、居住を目的としている場合は、耐用年数についてはそれほど気にする必要はありません。ただし中古マンションの購入時に住宅ローンを利用する際、築年数が耐用年数より古い場合は、融資を利用しにくくなることがあるので注意が必要です。
寿命が来るとマンションはどうなるの?
構造や建てられた年代、修繕などによってマンションの寿命は変わってきますが、寿命が来たマンションはどうなるのでしょう?大きく3つのケースが考えられます。
建て替えられる
老朽化して寿命が来たマンションは、建て替えられるケースがあります。ただし、建て替えのための取り壊し費用や新たな建物の建築費用は、区分所有者の負担となります。区分所有者とは、分譲マンションの専有部分を所有している人のこといいます。
ほかにも、建て替え中の仮住まいを借りる費用や引越し代などもかかるため、マンションの建て替えには、区分所有者の負担が大きくなります。また、建て替えをするためには、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成が必要となるため、実際には実施されない可能性もあります。
しかし、区分所有者の費用負担を軽く抑えながら建て替えが実現することがあります。それは、建て替え前よりも住戸を増やして建て替える場合です。
増えた住戸を販売することで、販売で得た費用を建て替え資金に充てて、区分所有者の費用負担を軽減させるためです。この場合は、増やした住戸が売れるような好立地であることと、そもそも新しく住戸を増やせる環境であることが条件となります。
売却される
寿命が来たマンションは、デベロッパーにまるごと売却して、区分所有者にその利益を分配するケースもあります。デベロッパーはマンションを取り壊し、その場所に新たな建物を建設します。ただし、この場合はマンション売却代金から解体費用が引かれるため受け取れる金額は少なくなってしまうことが一般的です。そのため、区分所有者からの反対も多く、現実的とはいえないでしょう。
●デベロッパーに関する記事はこちら
不具合があっても対処しない場合も
建て替えや売却では区分所有者への負担が大きいため、マンションの寿命が迫っていてもそのまま対処しないというケースもあります。築年数の古いマンションの場合、新築の頃から住んでいる人は高齢者となるため、新居を探して住み替えをすることに消極的な人がいます。
そのため、多少の不具合があっても、そのまま住み続けるという選択肢を選んでしまいがちです。しかし、国土交通省は、老朽化に対処しないマンションに対して危機感を抱いています。
寿命の長いマンションを見分ける5つのポイント
マンションの寿命は、建物の構造や使用されている建材、建物の管理状況、立地にいたるまで、さまざまな要素がもとになって決まっていきます。安全で長く住める物件を見分けるためには、どうしたらよいのでしょうか?主な5つのポイントをご紹介します。
[ 1 ] 建物構造は耐震基準を満たしているか
まず、「耐震基準」によって建物の耐震性をチェックしましょう。耐震基準とは、地震に耐える構造の基準のことで、建築物を設計する際に最も重視されるものの1つです。
1981年6月以降、「新耐震基準」が適用され、震度6~7レベルの揺れでも建物が倒壊しない構造基準が設けられるようになりました。ちなみに、それ以前の耐震基準は「旧耐震基準」といいます。
さらに、2000年にも建築基準が改正され、「新・新耐震基準(2000年基準)」が設けられました。新しい基準では、地盤調査の規定が充実し、一定の割合で耐力壁が配置されているかどうかも重要視されるようになりました。地震大国の日本の建築基準法で定められた耐震基準をクリアしているかは、安全に住むうえで大事なチェックポイントです。
中古マンションを検討する際は、特に建物が新耐震基準や2000年基準を満たしているかを確認するようにしましょう。
また、検討しているマンションが鉄筋コンクリート造、もしくは鉄骨鉄筋コンクリート造という構造で建てられているかという点も重要です。建物には、コンクリートに鉄筋を埋め込んだ鉄筋コンクリート造、コンクリート、鉄筋、鉄骨を組み合わせて造られている鉄骨鉄筋コンクリート造の建物があり、これらは鉄骨造の建物と比べて、耐久・耐震・耐火などの面で優れています。必ずどんな構造で建築されているのかを確かめるようにしましょう。
●マンションの耐震や構造に関する記事はこちら
[ 2 ] 配管のメンテナンスは十分か
配管のメンテナンスがきちんと行われているかどうか確認することも大切です。通常、配管の寿命の目安は30~40年といわれています。定期的に取り替えやメンテナンスがされているか確認するようにしましょう。
1960年から1970年代の高度成長期に建設されたマンションのなかには、配管をコンクリートに埋め込んでしまっている物件もあります。配管が埋め込まれている場合は、配管の取り替え工事を行うことができません。特に中古マンションの場合、配管はどうなっているか、取り替え工事がされているかどうかをチェックすることをおすすめします。
なお、給排水管はメッキ鋼管よりも、塩化ビニール管の方が腐食に強くさびにくいとされています。さらに、ステンレス鋼管の場合は、パッキンの交換さえすれば半永久的といわれています。
[ 3 ] コンクリートの状態はよいか
コンクリートの状態をチェックするすることも大切です。コンクリートは年月が経過すると、空気中の二酸化炭素の影響によって、徐々にアルカリ性を失って中性化していきます。コンクリートの中性化が進行すると中の鉄筋がさびやすくなり、建物の劣化を招きます。
コンクリートの状態を見極めるには、まず、外壁やベランダの壁に塗装の剥がれやひび割れがないか確認しましょう。一般的に塗装が剝がれた所から、コンクリートのひび割れが始まります。ひび割れはコンクリートの劣化を早めるだけでなく、雨漏りの原因にもなります。建物の塗装の剝がれ、そしてひび割れの有無を丹念にチェックしましょう。
[ 4 ] 管理は行き届いているか
マンションの寿命を長く保つためには、日々のメンテナンスが重要です。中古マンションの購入を検討する際には、マンション全体の管理が行き届いているか、チェックしましょう。チェックポイントは大きく2つです。
階段の手すりや柵など、鉄の部分にさびは出ていないか、排水はきれいかなどをチェックします。
貯水槽がある場合は、水を貯水槽に汲み上げるポンプが清潔か、貯水槽の点検が定期的に行われているかを確かめましょう。貯水槽の設置者、あるいは管理者は、年に1回点検を行い、水槽の検査結果を保健所に報告する義務があります。管理者にお願いして、点検した際の検査結果を見せてもらうようにしましょう。
また、廊下が汚れていたり、駐車場、駐輪場が乱雑、あるいはごみ置き場のゴミが散らかったりはしていないかなど生活している人の利用状況の面もチェックしましょう。
一見すれば小さな箇所でも、そのマンションの管理状態を把握することができます。小さな部分に目が届いていないということは、建物の維持に関しても管理がおろそかになっている可能性もあり得ますので、確認しておきましょう。
[ 5 ] 立地に適した修繕計画があるか
マンションではおよそ10年から13年おきに大規模な修繕工事が行われるのが通例です。大規模修繕実施の有無はもちろん、築年が古い場合は、そのマンションの年数や状況に適して見直された修繕計画があるかどうかもチェックしておきましょう。
また、同じ構造や設備を使用したマンションでも、立地条件が違うだけで劣化の度合いは異なります。たとえば、海沿いに建てられたマンションは潮風によって塩害が生じやすいものです。その場合、しっかりしたマンションでは、塩害対策も想定した修繕計画が予定されています。立地や環境に見合った長期修繕計画が立てられているか、実際に修繕積立金によって計画通りにメンテナンスが行われているか確認しておきましょう。確認する際は、修繕計画書や修繕履歴を見せてもらうようにするとよいでしょう。
●大規模修繕に関する記事はこちら
安全なマンションを見分けるのに役立つ制度がある!
寿命が長いマンションを見分けるためには、いくつかのポイントがありました。上記のほかにも、長く住んでいられるマンションかどうかを見極めるために役立つ制度があります。詳しく見ていきましょう。
新築は「住宅性能表示」を確認
新築マンションについては、専門知識のない人でも優良な住宅を手軽に選べるように制定された「住宅性能表示制度」を利用するとよいでしょう。住宅性能表示制度は、建物の安全性を、建築が行われる前の設計段階(設計住宅性能評価書)と、施工段階と住宅完成後(建設住宅性能評価書)の2段階に分けて調査し、その結果を買主に知らせるというものです。買主には、「住宅性能評価書」という書類で提示されます。
住宅性能評価の検査項目として10分野34事項が定められており、この検査項目のなかには耐久性を知るうえで役に立つ項目があります。
たとえば、「構造の安定に関すること」(分野)のなかでは、耐震や耐風、耐積雪に関して等級が定められています。「火災時の安全に関すること」(分野)の項目では、耐火等級が定められています。特に耐久性を知るうえでは、「劣化の軽減に関すること」(分野)と「維持管理・更新への配慮に関すること」(分野)は見ておきたいポイントです。
「劣化の軽減に関すること」では、劣化対策等級という項目があり、建物の耐久性を以下のような3段階に分けています。等級3が最も性能が高い住宅になります。
・等級1:建築基準法を最低限クリア
・等級2:通常の自然条件、維持管理を行う条件で、約50~60年間(2世代)ほど、大規模改修工事を必要とするまでの期間(概ね10年~13年)建物が維持できる劣化対策を行っている
・等級3:通常の自然条件、維持管理を行う条件で、約75~90年間(3世代)ほど、大規模改修工事を必要とするまでの期間(概ね10年~13年)建物が維持できる劣化対策を行っている
これらは、定期的に適切なメンテナンスが行われていること、大規模な災害などの例外が起きないことを条件に設けられた等級になります。
「維持管理・更新への配慮に関すること」では、維持管理対策等級というもので、専有部分や共用部分の配管について、点検、清掃、交換がしやすいかについて評価されています。また、この分野ではマンションの専有部分(住宅)の更新(リフォーム)がしやすい対策が取られているか判断する項目として、躯体天井高について表示されます。
新築マンションの購入を検討する際は、不動産会社に住宅性能評価書の有無を確認してみてください。
●住宅性能表示制度に関する記事はこちら
中古は「安心R住宅マーク」の確認
中古マンションについては、安全・安心な住宅の指針となる「安心R住宅」のマークが付いているか確認するとよいでしょう。「安心R住宅」制度では、住宅設計・施工の専門家による調査(インスペクション)がしっかりと行われ、品質や耐震性などの観点で基準を満たした中古住宅の広告にロゴマークの仕様が認められます。
もし購入を検討している住宅にロゴマークがなければ、売主(住宅の所有者)にインスペクションを依頼するか、売主に許可をもらえれば、自分の費用でインスペクション業者に依頼し、調査してもらうことも可能です。
●インスペクションに関する記事はこちら
確かな目で満足のゆくマンションを選ぼう!
マンションを購入すると、たとえ見た目が古くなったり使い勝手が悪くなったりしても、リノベーションすることである程度住まいを新しく快適にすることはできます。たとえば、システムキッチンを導入して古いレンジフードを交換したり、お風呂を最新のバスタブに交換したり、畳のある和室をフローリングにしたりなど、住宅設備や内装、ときには間取りを変えることで、マンションを魅力的な住まいにすることは可能です。
しかし、これまで見てきたように、マンションの寿命を左右するものは、構造と管理と、立地に沿ったメンテナンスです。この要素は、中古マンションはもちろん、新築マンションを選ぶときにもポイントとなります。これまで一定の資産価値が維持されてきたマンションでは、必要な補修や改修はもちろん、日々のこまめなメンテナンスが行われていることが共通点となっています。
自動車や自転車、洋服や靴などは使用していれば劣化し、メンテナンスが必要になりますが、日々の手入れを行っていれば長持ちします。マンションも、例外ではありません。
気に入って購入したマンションに末長く安心して住み続けられるように、購入を検討するときにはポイントを押さえて満足のゆく選択をしましょう。
※1出典:期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新 による価値向上について,国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001011879.pdf
(最終確認:21年11月1日)
情報提供:不動産鑑定士 竹内 英二
株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、不動産キャリアパーソン、中小企業診断士。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングを行う。
HP:https://grow-profit.net/