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長期優良住宅とは?メリットや申請方法、条件も解説
物件の購入を検討しているのですが、「長期優良住宅」に認定された住宅は、普通の住宅に比べていろいろなメリットがあると聞きました。長期優良住宅とは、どのような住宅でしょうか?また認定の条件とはどういったものでしょうか?
長期優良住宅とは、「長期優良住宅認定制度」に基づく耐震性やバリアフリー対策など複数の基準を満たし、認定を受けた住宅です。すなわち、「長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造及び設備に講じられた優良な住宅」のことをいいます。認定されることで、住宅ローンの優遇金利や減税などの優遇措置を受けられます。
情報提供:不動産コンサルタント 秋津 智幸
目次
長期優良住宅とは
長期優良住宅とは、「住宅の質の向上及び円滑な取引環境の整備のための長期優良住宅の普及の促進に関する法律(以下「長期優良住宅促進法」)」に基づく「長期優良住宅認定制度」の基準を満たし、認定された住宅のことを指します。
長期優良住宅は、耐震性や維持保全性、可変性、居住環境などの、さまざまな厳しい基準を満たしているため、一般的な住宅と比べて性能が優れています。そのため、安心して長く住み続けることができる家です。また、環境にやさしい省エネ対策や、バリアフリー対策、将来の生活を見越した劣化対策や維持管理のしやすさなどに配慮されていることも特長です。
国土交通省※1では、長期優良住宅を大きく分けて以下の措置が講じられている住宅と定めています。
・長期的に使用するための構造及び設備を有していること
・住居環境等への配慮を行っていること
・一定面積以上の住戸面積を有していること
・維持保全の期間、方法を定めていること
・自然災害への配慮を行っていること
また、長期優良住宅の認定住宅は、各種税金の優遇措置、住宅ローンの優遇金利、補助金の支給など、さまざまな優遇が受けられます。購入するマイホームをどういった住宅にするか悩んでいる人にとっては、見逃せないポイントですね。
そこで今回は、マイホームの購入を検討している人に向けて、長期優良住宅のメリットと注意点を分かりやすく紹介します。
長期優良住宅を購入するメリットは5つ
購入するマイホームに長期優良住宅を選ぶと、次の5つのメリットが得られます。
[ 1 ] 長期間にわたって安全かつ快適に暮らすことができる
[ 2 ] 税制の優遇措置を得られる
[ 3 ] 補助金を受け取ることができる
[ 4 ] 地震保険料が割引になる
[ 5 ] フラット35をよい条件で利用できる
[ 1 ] 長期間にわたって安全かつ快適に暮らすことができる
長期優良住宅はその名の通り、安全で快適な住まいに長期的に住めるという点が大きなメリットです。バリアフリーの観点でも一定の基準を満たしているため、二世代、三世代での同居にも適しています。安心かつ快適に暮らすことができるよう、耐震性や断熱性などさまざまな観点で高基準を満たす長期優良住宅であれば、次の世代にも安心して引き継ぐことができます。
[ 2 ] 税制の優遇措置を得られる
さまざまな税制優遇措置を得られるのも、長期優良住宅を購入するメリットです。詳しい内容は以下の記事でご確認ください。
・住宅ローン控除についてはこちら
・住宅取得等資金贈与の非課税措置についてはこちら
・所得税額の特別控除についてはこちら
・登録免許税の税率の軽減についてはこちら
・固定資産税の減税措置についてはこちら
[ 3 ] 補助金を受け取ることができる
長期優良住宅を新築、リフォームする場合、以下のような補助金を受け取ることができます。
●子育てエコホーム支援事業
この補助事業は、子育て世帯・若者夫婦世帯が省エネ性能を有する新築住宅の取得や住宅の省エネ改修等を行う場合に、補助が受けられます。対象となる住宅は、長期優良住宅とZEH住宅です。
この補助金は、要件を満たした住宅工事で、2023年11月2日(閣議決定)以降に基礎工事より後の工事、またはリフォーム工事に着手したものが適用となりますが、予算が定められており、予算に達し次第終了となります。
●地域型住宅グリーン化事業
この事業の補助金は、18歳未満の子供のいる世帯(子育て世帯)または若者夫婦世帯(夫婦のうちどちらかが39歳以下の世帯)が対象で、長期優良住宅や低炭素住宅、ZEH住宅等の省エネ性能に優れた木造住宅を新築、または既存住宅の要件を満たす省エネ改修を行う場合に補助が受けられます。
[ 4 ] 地震保険料が割引になる
長期優良住宅では、認定を受けるために一定の耐震性が求められます。その認定時の耐震性に応じて、地震保険の保険料が割引になります。
●耐震等級割引
品確法に基づく耐震等級で、耐震等級2であれば30%、耐震等級3であれば50%の割引率となります。
●免震建築物割引
品確法に基づく免震建築物である場合、50%の割引率となります。
[ 5 ] フラット35をよい条件で利用できる
長期優良住宅は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する住宅ローンのフラット35の住宅ローンが有利に利用できます。
●フラット35の「S(ZEH)」が適用され、金利が当初10年間引き下げられる良質な住宅のうち、さらにZEH水準以上の住宅を取得する場合に利用できるフラット35(ZEH)というものがあり、金利が当初5年間0.5%、6年目~10年目まで0.25%引き下げられます。さらに、フラット35(ZEH)を利用する際、長期優良住宅であれば、さらに金利が優遇され、当初10年間金利が0.5%引き下げられます。
●フラット50の利用ができる
フラット50は、返済期間最長50年となる住宅ローンで、将来、住宅を売却することになった場合、購入者に住宅ローンを引き継げる点も特徴です。長期優良住宅であれば、このフラット50が利用できるようになります。
長期優良住宅の認定条件は10項目
上記のように、長期優良住宅にはさまざまな優遇制度がある一方、認定を受けるには国の定めた条件を満たさなければなりません。具体的には、次の10項目の基準を満たすことが必要とされています。
基準項目 | 認定基準の概要(新築住宅) |
---|---|
劣化対策 |
・劣化対策等級3の基準に適合し、かつ構造の種類に応じた基準に適合すること(3世代以上にわたり住宅の構造躯体が使用できること。通常の維持や管理で、100年程度使用できること) ・新築木造住宅の場合は、床下と小屋裏に点検口を設置されていること、床下空間の高さ330mm以上あること。 |
耐震性 |
次のいずれかに該当する耐震性が必要 ・耐震等級(倒壊等防止)2等級(2階以下の木造建築物で壁量計算による場合は等級3) ・耐震等級(倒壊等防止)等級1かつ安全限界時の層間変形を1/100(木造の場合1/40)以下 ・耐震等級(倒壊等防止)等級1かつ各階の張り間方向及びけた行方向について所定の基準に適合するもの(RC造等の場合に限る) ・品確法に定める免震建築物 |
維持管理、更新の容易性 | 建物躯体より耐用年数が短い設備配管に関して、清掃・点検・補修などの維持管理が簡単にできる措置が取られていること。(維持管理対策等級3以上、または更新対策等級3以上であること) |
省エネルギー対策 | 断熱性能など基準を満たす省エネルギー対策が取られていること。(断熱等性能等級5以上で、一次エネルギー消費量等級6以上であること) |
可変性 (共同住宅・長屋) |
居住者のライフスタイルの変化に応じて間取りの変更が可能であること。たとえば、将来の間取り変更に備え、配管、配線のための天井の高さ(2,650mm以上)を確保すること。 |
バリアフリー性 (共同住宅・長屋) |
高齢者等配慮等級(共用部分)と等級3 (共用部分に将来のバリアフリー改修に対応できるように必要スペースが確保されていること) |
居住環境への配慮 |
・良好な景観の形成そのほかの地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること。 ・地区計画、景観計画、条例によるまちなみ等の計画、建築協定、景観協定等の区域内にある場合には、これらの内容と調和を図ること |
住戸面積 | 良好な居住水準を確保するために必要な規模(面積)を有すること。一戸建て住宅の場合は75㎡以上、共同住宅の場合は40㎡以上の面積が必要。(少なくとも1つの階は階段部分を除き40㎡以上が必要) |
維持保全計画 |
建築時から将来を見据えて、以下の部分・設備について定期的な点検・補修などに関する計画が立てられていること。最低でも10年ごとに点検を実施すること。 ・住宅の構造耐力上主要な部分 ・住宅の雨水の浸入を防止する部分 ・住宅に設ける給水または排水のための設備 |
災害配慮 | 災害発生が予想される地域においては、リスクの高さに応じて所管行政庁が定めた措置を講じること |
これまでは地震以外の災害リスクが考慮されていませんでしたが、改正によって「自然災害による被害の発生の防止または軽減に配慮されたものであること」が、認定基準に追加されることになりました。
長期優良住宅の申請方法は?
長期優良住宅の認定を受けるには、申請と書類審査が必要です。申請から認定までの流れを、おおまかに4ステップに分けて見ていきましょう。
[ 1 ] 事前相談後、依頼書類を作成して審査を受ける
申請依頼者(建築主や分譲事業者、建築会社)は、まず「長期優良住宅建築等計画」の案を作成し、登録住宅性能評価機関へ事前相談をします。相談後、完成した依頼書を評価機関へ提出して長期使用構造等確認依頼をします。評価機関で依頼が受理されたら、審査が始まり、質疑応答を経て審査にかかる費用の支払いを行う流れです。
[ 2 ] 確認書を交付してもらう
登録住宅性能評価機関で認定基準を満たしていると判断されると、確認書が交付されます。
[ 3 ] 確認書と必要書類を提出する
登録住宅性能評価機関からの確認書の交付後、確認書を添付して、認定申請書・設計内容説明書・各種図面・計算書・添付図書一覧などの必要書類を所管行政庁へ提出、申請します。
[ 4 ] 所管行政庁が審査を行う
所管行政庁が認定基準の区分ごとに技術的審査をし、認定されると「認定通知書」が交付されます。なお、登録住宅性能評価機関からの確認書が交付されている場合でも、所管行政庁の審査の結果、不適合となる場合もあります。
これまでは、住宅性能評価を行う民間機関と長期優良住宅の基準確認を行う機関が別だったため、それぞれの機関で認定手続きをする必要がありました。しかし、今回の改正から、性能評価機関が行う住宅性能評価と併せて長期優良住宅の確認申請を行えるようになったことで、認定手続きが効率化されました。
長期優良住宅の注意点
優れた基本性能を持ち、税制や住宅ローンなどで優遇措置も適用される長期優良認定住宅ですが、注意点もあります。長期優良住宅を新築(建築)、購入する前にチェックしておきましょう。
[ 1 ] 着工してからでは申請できない
仮に長期優良住宅と同等の性能を有する住宅を建てた場合でも、着工してからの申請の場合には、長期優良認定住宅として認められないので、注意しましょう。そのため、長期優良住宅の認定を希望する際は、着工前に申請し、審査を経て、認定を受ける必要があります。
[ 2 ] 建築費が増える
長期優良住宅は、高性能の住宅を建築することになるため、採用する素材や設備のグレードにもよりますが、建築費は一般的な住宅よりもおおむね1割程度高くなる傾向があります。ただし、前述の通り、長期優良住宅向けの減税や補助金などの制度があるので、それらをうまく活用することで費用を抑えることも可能です。
[ 3 ] 費用や手間がかかる
長期優良住宅の場合、一般的な住宅と比べて、着工前の申請書作成にかかる費用や、図面をはじめとした多くの書類をそろえる手間がかかります。申請にかかる費用は数万円から数十万円にのぼることもあります。また、認可を受けるまでにかかる時間は数週間から数か月です。そのため、長期優良住宅の認定を受けたい場合には、これらの費用や時間を考慮して、余裕を持った予算やスケジュールを組むようにしましょう。
[ 4 ] 住宅のプランに制約が発生する
長期優良住宅は、耐震性や省エネ性、維持管理・更新の容易性などの性能面だけでなく、住戸面積の要件も満たさなければなりません。そのため、必須となる施工の項目が通常の住宅より多いという点で、住宅プランに制約が生じる可能性があります。
[ 5 ] 完成後も、維持保全が必要でコストもかかる
長期優良住宅の認定を受けるには、認定条件として定期点検とメンテナンスを行う必要があります。従って、建物完成後も良好な状態を維持できるよう住宅を保全していかなければなりません。具体的には、建物が完成してからも30年以上にわたって、10年以内ごとに点検や修繕、改良の記録を作成し、保存する義務が発生します。これには必要なコストもかかります。長期優良住宅では、完成後も維持管理の重要性に留意する必要があります。
長期優良住宅制度を活用して夢のマイホームを!
長期優良住宅には、優遇措置があり、快適な居住空間を確保し、建物の資産価値が長く維持できるというメリットがあります。一方で、一般的な住宅に比べて建築コストや申請費用が高いといった注意点もあるため、メリットと注意点の双方を理解したうえで、長期優良住宅の認定を受けるかどうかを検討することが大切です。マイホームの建築・購入の際は、不動産会社や施工会社に相談すると安心ですよ。
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※1出典:「長期優良住宅認定精度の技術基準の概要について」国土交通省
https://www.hyoukakyoukai.or.jp/download/pdf/chouki_sin_2022_1.pdf
(最終確認:2024年3月13日)
情報提供:不動産コンサルタント 秋津 智幸
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。不動産コンサルタントとして、物件の選び方から資金のことまで、住宅購入に関するコンサルティングを行なう。