マンション購入ガイド
いま注目のZEHとは?マンション(ZEH – M)のケースをご紹介
最近、ZEHという言葉をよく目にします。環境にやさしい戸建てに対して使われる言葉のようなイメージなのですが、マンションには関係のある言葉なのでしょうか?教えてください。
環境にやさしい省エネ設計の住宅を指すZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)。戸建ての建築が多かったものの、今年に入り集合住宅(マンション)に関するZEHの定義が決まり、マンションにも導入されるようになりました。今後はZEHの基準を満たした、省エネ分譲マンションが増えていくといわれています。
情報提供:不動産コンサルタント 秋津 智幸
目次
そもそもZEH(ゼッチ)ってどういうもの?
最近、不動産・建築業界で目にすることが多くなった言葉に、ZEHというものがあります。ZEHってなに?読み方は?環境にやさしい住宅というのは、なんとなく知っているけど…という方は多いのではないでしょうか。世間で広まりつつあるZEHについて、今回は詳しくご紹介していきます。
消費エネルギーがゼロの住まい
ZEHとは、ゼロ・エネルギー・ハウスを略した言葉で、「ゼッチ」という呼び方をします。資源エネルギー庁の定義では、「外皮の断熱性能などを大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムを導入しており、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現、「再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」とされています。
難しく書かれていますが、少し簡単にまとめると「断熱性を向上させ、熱効率のよい省エネ設備を使用して、年間のエネルギー収支(使用するエネルギー分を作り出して)ゼロになるような住宅」ということになります。そのため、正確にはnetが頭についた、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスという呼び方になっています。
断熱性を高めるとは、建物の外気を隔てる壁の内側に、通常よりも厚く断熱材を入れたり、ペアガラス(ガラスが2枚はめ込まれその間に空気の層を設けることで外気の温度や音が伝わりにくいようにした)にすることで室内の温度変化を抑えること。
また、普段当たり前のように使っているテレビやエアコン、照明といった家電製品では、多くの電力が消費されているので、そのエネルギー消費量を、効率のよい家電に切り替えることなどで省エネ化すること。そして、屋根などに太陽光発電設備を設置するといった「創エネ」によって、消費するエネルギーと、つくり出すエネルギーを差し引きゼロにするような住宅を、ZEHと定義しました。
国は、2016年の閣議決定では「2020年までにハウスメーカー等の建築する注文戸建住宅の過半数でZEHを実現すること」、また、2014年に閣議決定された「エネルギー基本政策」において「2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」とも発表しています。
少し表現がわかりにくいですが、2030年までには建築された新築住宅のエネルギー消費の平均をゼロにするということ。このように大きく2つの目標を掲げています。こうした背景から、近年ではZEHの普及が急速に進められています。
2018年はZEH – M(ゼッチ・マンション)も登場
ZEHの普及は主に戸建てを中心に行われてきましたが、2018年に集合住宅に関するZEHの定義が決定され、「ZEH – M(ゼッチ・マンション)」と呼ばれる、マンションのZEH化も進められるようになりました。その定義によれば、ZEH – Mでは、一棟のマンションまたは住戸(マンションの部屋)ごとの性能をZEHの基準に適合させる必要があるとされています。
先にお話しした「ZEH」は、断熱材を用いた外皮基準や、高い効率を持つ電気設備の導入といった省エネ量、太陽光発電設備等の発電設備を設置する創エネ量の各項目にさまざまな基準が設けられており、ZEHと認められるためには、それらの基準をすべてクリアする必要があります。
マンションは居住人数が多く、そのエネルギー消費量に対して太陽光発電設備などを設置する屋上などの余剰面積が狭く発電量が小さいため、これまでは創エネの面で、戸建てと比べて劣っていた背景がありました。しかし、最近ではそれらも克服されつつあることもあって、ようやく今年、マンションのZEH化にも明確な定義が設けられました。
「ZEH - M(ゼッチ・マンション)」の種類と定義をご紹介!
・Nearly ZEH – M
地上1~3階建てのマンションの要件とされるZEH基準を満たすマンションの呼称。断熱や気密、防露といった性能を証明するZEHの外皮基準を満たしていて、かつ、基準値からのエネルギー削減率が、再生可能エネルギーを含んだときに75%以上、含まないときに20%以上であることが条件。
なお、この発電された再生可能エネルギーは敷地内に設置し、住宅内と共用部に供給されていることが要件とされています。(共用部のみに供給されている場合も要件を満たすとされていますが、その場合は補助の対象外となる。)
・ZEH – M Ready
地上4、5階建てのマンションの要件とされるZEH基準を満たすマンションの呼称。断熱や気密、防露といった性能を証明する外皮基準を満たしていて、かつ、基準値からのエネルギー削減率が、再生可能エネルギーを含んだときに50%以上、含まないときに20%以上であることが条件とされ、発電された再生可能エネルギーの形態については「Nearly ZEH – M」と同じになります。
・ZEH – M Oriented
地上6階建て以上のマンションの要件とされるZEH基準を満たすマンションの呼称。断熱や気密、防露といった性能を証明する外皮基準を満たしていて、かつ、基準値からのエネルギー削減率が、再生可能エネルギーを含まず20%以上であることが条件となっており、再生可能エネルギーを含む場合の要件と再生可能エネルギーの形態の要件には基準がありません。
その他、ZEH – Mも含めたZEHの条件を満たす新築住宅の建設にあたっては、登録を受けた「ZEHデベロッパー」が建築主または建築を請け負うことが基本要件となっています。
ZEH – M(ゼッチ・マンション)に住むメリットって?
ZEH – M(ゼッチ・マンション)が今年から正式に認定されたことにより、今後はZEH – Mの建設が増えていくといわれています。登録を受けた「ZEHデベロッパー」が前述したような要件を満たす「ZEH – M」を建築する場合には、補助金も用意されており、こうした背景から、ZEH化を取り入れた分譲マンションの建設の流れは今後加速していくでしょう。
これから注目すべきZEH基準のマンションには、どのような魅力があるのでしょうか。実際に住むにあたっての具体的なメリットをご紹介していきましょう。
自家発電で光熱費が抑えられる
ZEH – Mでは、断熱性の高い室内に加え、省エネ効率の高い照明や冷暖房機器、給湯機器を採用することによって消費エネルギーを抑え、太陽光発電設備によって電力(再生可能エネルギー)を発電します。そのため、入居される方はぐっと光熱費が抑えられることに。快適な住宅に住みながら生活費が抑えられるというのは大きな魅力ですね。
具体的にどれくらい光熱費が抑えられるかは、まだZEH – Mの例が少なく算出が難しいですが、従来のマンションと比べて光熱費は抑えられる可能性が非常に高いといえます。また、災害時に停電が起きた際も、ZEH – Mならマンション内で発電した電気を使うことができるので、従来のマンションよりも防災面での安心感は高まりますね。
断熱による快適な室内
ZEH – Mの基準には、断熱性と気密性の確保が必須となっています。外気と室内の空気が高度に遮断される仕様になっているので、夏の冷房効率もよくなり、冬の温かい空気が維持されるので、常に快適な温度の室内で過ごすことができます。また、部屋によって温度差も小さくなるので、冬場に心配されるヒートショック対策にもなります。高齢者のいる家庭などには、特に嬉しい環境になりますね。
資産価値の向上
ZEH基準を満たすマンションは、居住性もよく、光熱費の削減といったメリットもあることから、資産価値が高くなる可能性が高いといえますね。マンション購入時に資産価値が高いほうがよいという方は注目しておくとよいでしょう。
ZEH – M(ゼッチ・マンション)の今後の展開は?
これまでお伝えしたように、国は2020年までと2030年までに一定の目標を掲げています。この新築住宅に対する「ZEH」の普及という目標を達成するためには、戸建てのZEH化だけではなく、マンションのZEH化も必至ということになります。
2018年、経済産業省の主導により、「平成30年度高層ZEH – M実証事業」が始まったばかり。現在のところ、実際に建てられているZEH – Mは少ないものの、建築請負業者やデベロッパーに対して補助金制度も設けられているので、今後はますます普及が進んでいくといわれています。
時代とともに、マンションの形も少しずつ変わってきています。「ZEH – M(ゼッチ・マンション)」という基準を満たす新しいタイプのマンションは、居住性能が高いことから身体にも優しく住む人にとってもメリットの大きい住宅です。
そして、環境にやさしい住宅でもあり、普段の生活を送るだけでも子供たちの未来を考えた住み方のできるマンションといえます。今後、普及が進んでいくと予想されるZEH – Mは、これからいっそう注目が高まっていくと思われます。今後、ZEH - Mが普及してきた際には、ZEH – Mを検討の選択肢に入れてみるのもよいでしょう。
情報提供:不動産コンサルタント 秋津 智幸
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。不動産コンサルタントとして、物件の選び方から資金のことまで、住宅購入に関するコンサルティングを行なう。