マンション購入ガイド
住宅ローンの借り換えとは?適切なタイミングや注意点などについて解説
月々の住宅ローンの返済額が負担になっています。住宅ローンの借り換えを検討しているのですが、損をしないためのコツや注意点はありますか?
住宅ローンの借り換えを行う場合は、金利の変動をもとにタイミングを決めることが大切です。また、借り換えには手数料や税金が発生するため、それらの出費を含めてメリットがあるかどうか検討しましょう。
情報提供:税理士 宮原 裕徳
目次
住宅ローンの借り換えとは?
以前から契約している住宅ローンについて、「毎月の支払い額が負担になってきた」と感じる方もいるのではないでしょうか?住宅ローンを別の金融機関で組み直したい場合には「借り換え」という方法があります。
住宅ローンの借り換えとは、現在借り入れしている銀行とは別の銀行から新たに住宅ローンを借り入れて、現在返済している住宅ローンを完済することです。今まで借りていた銀行にはローンを一括返済し、その後は新しく住宅ローンを借り入れた銀行に返済していきます。
現在借り入れしている住宅ローンに比べて金利が低かったり、サービスが充実していたりするなど、条件がよければ新しい銀行の住宅ローンに借り換えることは効果的です。たとえば以下のようなメリットがあります。
・毎月返済額と返済総額を減らせる
・金利上昇のリスクに備えて低い金利で固定できる
・団体信用生命保険の見直しができる
ただし、手数料が発生したり、審査に通らなかったりするケースもあるため、よく検討して判断する必要があります。
この記事では、住宅ローンの借り換えを検討している方に向けて、借り換えの適切なタイミングや、手続きの方法、注意点などについて解説します。
なお、住宅ローンの借り換えをする際に損をしないためにも、まずは住宅ローンや金利に関する基礎知識を深めておくことがおすすめです。下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
●住宅ローンの種類に関する記事はこちら
住宅ローンの種類や選び方のポイントをご紹介します。
●住宅ローンの金利に関する記事はこちら
住宅ローンの固定金利・変動金利の違いとは?金利がずっと変わらない固定金利と経済状況に応じて変わる変動金利。それぞれの金利タイプの特徴をご紹介します。
住宅ローンの借り換えをする適切なタイミングは?
住宅ローンの切り替えは、現在利用している住宅ローンの金利が高いときに行うとよいでしょう。また、一般的に以下のようなタイミングが借り換えの目安です。
・ローンの返済期間が10年以上
・残高が1,000万円以上
・利用している住宅ローンと現在の金利水準の差が1%以上
詳しいタイミングは以下の通りです。
現在の金利水準より住宅ローン商品の金利が高いとき
現在の金利水準より、利用している住宅ローン商品の金利が高くなっている場合は、借り換えの検討をするとよいでしょう。
借り入れ金額が多い住宅ローンは、わずかな金利の違いでも影響を大きく受けるため、借り換えによって数十万、数百万程度の差が出てくることもあります。そのため、より金利の低い住宅ローンに借り換えれば、返済額の減額につながります。
変動金利が上がるとき
「変動金利型」の住宅ローンを利用している方は、金利が上がるタイミングで「固定金利型」の住宅ローンへ借り換えを検討することがおすすめです。
変動金利型の住宅ローンは、市場金利の変化によって月々の利子も変化します。つまり、金利が低いうちは利子も安くなりますが、金利が高くなると利子も高くなるということです。
固定金利型に切り替えれば、固定期間中は利子が一定になるので、返済計画も立てやすいでしょう。
また、固定金利期間選択型といって、金利の固定期間を全期間ではなく、2年・3年・5年・10年・20年などの期間から選択できる住宅ローンもあります。一般的に、固定期間終了時に手続きをしなければ、変動金利に切り替わりますが、再度固定金利の期間を選ぶこともできます。
住宅ローン借り換えの流れ
住宅ローンの借り換えをする際の流れは、以下の7つのステップに分けられます。スムーズな手続きをするために、流れをつかんでおくとよいでしょう。
[ 1 ] 現状のローン残高や金利プランなどを確認する
[ 2 ] 必要書類を用意する
[ 3 ] 借り換える銀行を選ぶ(もしくは商品を絞り込む)
[ 4 ] 借り換える銀行に審査を申し込む
[ 5 ] 借り換える銀行の本審査を通過したら、現在の借り入れ先に完済手続きを申し込む
[ 6 ] 借り換える銀行に融資の申し込みを行う
[ 7 ] 司法書士と面談し、ローン契約の締結を行う
[ 8 ] 融資が実行されたら、現在の借り入れ先の融資を完済する
住宅ローン借り換えで必要な書類
住宅ローンの借り換えをする際に必要な書類は以下の通りです。ただし、金融機関によって異なるケースもあるため、事前に確認することが大切です。また、書類の数が多いため、早いうちから準備しておきましょう。
書類名等 | 書類の取得先 |
---|---|
本人確認書類(運転免許証またはマイナンバーカードの写しなど) | 自分のもの |
健康保険証の写し | 自分のもの |
印鑑証明書 | お住まいの市役所 |
住民票・源泉徴収票(前年分)または確定申告書 | 住民票はお住まいの市役所、源泉徴収票は勤務先の会社 |
住民税決定通知書または住民税課税証明書 | 住民税決定通知書は勤務先の会社(個人事業主の場合は各自治体)、住民税課税証明書はお住まいの市役所 |
売買契約書 | 不動産契約時に交わした書類 |
不動産登記簿謄本(土地・建物) | 所轄の法務局 |
住宅地図 | インターネットよりダウンロードしたもの |
公図 | 所轄の法務局 |
地積測量図 | 所轄の法務局 |
建物図面 | 不動産取得時に渡された書類 |
建築確認書 | 不動産取得時に渡された書類 |
住宅ローンの返済予定表 | ローンを組んだ際に渡された書類 |
マイカーローンや教育ローンなど、そのほかの借り入れ明細 | ローンを組んだ際に渡された書類 |
対象物件の火災保険証券など | 保険契約時に交わした書類 |
もし上記に記載された本人確認書類がない場合は、年金手帳と印鑑登録証明書のように、2点以上そろえると本人確認として認められる書類があるため、併せて金融機関に確認してみましょう。なお、2020年2月4日以降に発行されたパスポートも、1点では、本人確認書類として認められず、住所が記載されている本人確認書類の原本が別途で必要です。
住宅ローンの借り換えの注意点
住宅ローンの借り換えをする際には、いくつか注意しておくべきポイントがあります。金利だけで借り換えを判断するのではなく、以下に述べる注意点もしっかり考慮に入れて検討しましょう。
手数料が発生する
住宅ローンを借り換える際には、手数料や税金が発生します。主な種類と概要は以下の通りです。
●事務手数料
事務手数料とは、事務手続きの費用として銀行に支払う手数料のことです。また、金融機関によっては、一定の金額を払う「定額型」と借入金額に応じて手数料が変わる「定率型」があります。
●保証料
保証料とは、万が一住宅ローンの支払いができなくなった場合に備えて、信用保証会社に支払う費用のことです。借り換えの場合、新たに支払う保証料もあれば、繰り上げ返済で完済した分から戻ってくる保証料もあるため、確認しておきましょう。
●登録免許税
抵当権の切り替え時に登記を行うので、登録免許税がかかります。マイホームは銀行の担保に入っているため、基本的に抵当権が設定されています。借り換えの際には、現在ローンを利用している銀行の抵当権を抹消し、新たにローンを組む銀行の抵当権を設定します。登録免許税の目安は、残りの借入金額から0.4%をかけた額となるのが一般的です。
●司法書士報酬
司法書士報酬とは、住宅ローンの借り換えの手続きを司法書士に依頼する場合に、司法書士へ支払う報酬のことです。司法書士によって変わりますが、数万円が目安となります。
●印紙税
印紙税は契約書を作成する際に必要となる税金のことです。住宅ローンの借入金額が1,000万円超5,000万円以下の場合、今は軽減税率が適用されるため1万円です。
このように、住宅ローンの借り換えで発生する費用にはさまざまなものがあります。残りの総返済額と諸費用を含めた額が、現在見込まれる総支払額よりも負担が軽減されなければ借り換えるメリットはないといえるでしょう。
審査がある
借り換えの際には、住宅ローンの審査が行われます。金融機関ごとに審査基準が異なるため、場合によっては審査基準を満たせず、借り換えができないケースもあります。
住宅ローンの借り入れは、基本的に「団体信用生命保険(団信)」の加入が必須となります。団体信用生命保険の加入には、健康状態や収入、信用情報などが影響するため注意が必要です。たとえば、以前ローンを組んだ時点では健康状態に問題がなくとも、次の審査で問題があると団体信用生命保険に加入できず、住宅ローンの借り入れができなくなる場合があります。
一方、借り換えをすることで、団体信用生命保険の見直しを行えるといったメリットも挙げられます。たとえば、高度障害や死亡の保障のみだった方は、がんや介護の保障が付いているものに変更できることがあります。
また、転職をしたばかりの方や、その予定がある方は収入の状況が変わるため、年収の再計算を行ったり、ほかのローン(学資ローンやマイカーローン)の利用状況を確認したりしてから借り換えを検討することがおすすめです。
同じ銀行では借り換えができない
一般的に、同じ銀行で住宅ローンの借り換えはできません。そのため、住宅ローンの借り換えをする場合は、ほかの銀行で検討する必要があるのです。ただし、民間金融機関と住宅金融支援機構が提供する住宅ローンである「フラット35」では、これまでと違う住宅ローンの商品であれば借り換えが可能な場合もあります。
当初金利だけでは判断しにくい
今支払っている実質的な金利と、借り換え時の金利の比較は正しく行うことが大切です。住宅ローンの借り換え時に重要な金利は、10年固定金利と銘打っていても「当初金利(借り入れ当初から一定期間のみの優遇金利)」だけでなく、固定期間終了時の金利も考えないと本当にメリットがあるか判断できません。
そのため、住宅ローンの商品価値を正しく判断するには、「元本(最初に借りたもとのお金) + 当初金利の利子 + 固定期間終了後の利子」を合わせた実質金利(トータルコスト)で比較することが必要です。
贈与税が発生することがある
複数人が共同で債務を負う「連帯債務型」の住宅ローンから借り換えをすると、贈与税を課税される場合があります。たとえば、夫婦の連帯債務から夫の単独名義のローンに借り換えた場合、妻の分の残債が夫によって一括返済されるため「贈与が発生した」と見なされるのです。このような借り換えを検討している場合、贈与税の発生に当てはまるかどうか税理士に相談してみましょう。
ちなみに贈与税とは、個人から財産をもらったときにかかる税金のことで、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から、基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。
住宅ローンの借り換えにメリットがあるか考えよう
ここまで住宅ローンの借り換えを検討している方に向けて、借り換えの適切なタイミングや、手続きの方法、注意点などについて解説してきました。住宅ローンの支払いによる負担が大きくなってしまった場合には、住宅ローンの借り換えを検討するのも1つの方法です。
借り換えをする場合は、お伝えしてきたように、金利の変動をチェックし、適切なタイミングを選択することが大切です。また、手数料や税金などの費用が発生したり、再審査を受けたりする必要があるため、これらのことを踏まえて本当に借り換えをするメリットがあるのか検討しましょう。
なお、住宅金融支援機構では、借り換え時のローン返済額を無料でシミュレーションできます。住宅ローンの種類や、返済期間などの情報を入力すれば自動で返済額が算出されるため、借り換えのメリットがどのくらいあるかを具体的な数字で把握でき、おすすめです。
住宅ローンは最長35年の契約となり、トータルで多額の資金が動くことになります。最終的に損をしないためにも、上記のポイントを踏まえて賢く借り換えを検討しましょう。判断が難しいときは、ファイナンシャルプランナーや不動産会社へ相談してみるのもおすすめですよ。
情報提供:税理士 宮原 裕徳
株式会社ラムチップ・パートナーズ代表取締役。税理士。LAMTIP PARTNERS(Thailand) Co., Ltd. CEO日本と東南アジアの不動産にかかわる会計・税務に詳しい。法人や個人向けに、無駄な税金を払わないための節税対策セミナーなども行う。